植物由来の食べ物とウイスキーのペアリング

象も踊りだすような 素敵な宴

自分はヴィーガンであると告げると周りから好奇や偏見の目で見られた時代はとっくの昔のこと。でも、植物由来の食べ物だけで組み立てられたディナーメニューとソサエティのウイスキーのペアリングについてはどう思われますか? マイエレファントキッチンを家族経営しているシルナ、エイドリアン、ガウリを訪ねて、ヴィーガンの3皿のコースにソサエティのウイスキーからぴったりのフレーバーをペアリングしてもらいました。 椅子を引いて、グラスを掲げて、思わず象だって踊りだしちゃうような素敵な宴を楽しみましょう。

“ナマステ! ご来店をお待ちしておりました! どうぞ席に座ってリラックスしてください。 準備は万端ですよ。”

シルナ、アドリアン、ガウリが私達を店内に招き入れると、スパイスの香りがエキゾチックなディナーへの期待を高めてくれます。 美しいアンティークのインドチークのテーブルが目を惹き、部屋をろうそくとブロックプリントされたテキスタイルが彩っています。落ち着くと同時にわくわくする空間です。

グラスに注がれた一杯目のソサエティのウイスキーが明るい金色に輝いています。香りを少しかぐだけでも、力強いピート香が伝わってきます。そして胡椒のようなスパイスの香り、焼いたハーブの香り、お香のような香り、ピート香、新鮮なシトラスフルーツの香り−それらが嗅覚を刺激します。 複雑な香りを分析しているうちに、一皿目が運ばれてきました。

まるで色彩の爆発ともいうべき華やかさです。

シルナが説明してくれます。 「最初のお皿は黒いレンズ豆とキドニー豆のサラダです。ギリシャのサマーオレンジのスライスとレモン汁、ザクロの種を加え、コリアンダーとインドのチリペッパーで風味を加えたところにタマリンドのチャツネで和えてまろやかにしています。」

一口食べると、様々な香りで口の中が満たされます。土のようなナッツのようなレンズ豆の味がベースとなり、オレンジとザクロのジューシーさとチャツネの甘酸っぱさに心躍り、そしてウイスキーを口にした時にすべてが一つにまとまります。

マイエレファントキッチンのスピリッツ担当にしてウイスキー愛好家のエイドリアンは、ペアリングの選択を解説してくれました。 「モルトウイスキーと食べ物のペアリングを考えた時、それこそ何万通りもの可能性があります。ウイスキーには食べ物の味をかき消すのではなく引き立ててほしいと考えています。 ピート香の強いウイスキーの場合、料理もスモーキーだとやりすぎになってしまいます。この料理に対してこのウイスキーはうまく役割を果たしてくれて、ハーブやスパイスのフレーバーで彩り、新鮮なシトラスやコリアンダーの香りを強調し、タマリンドチャツネを引き立てるのに十分な強さがあります。 そしてこのウイスキーのピート香はかすかにスモーキーな香りのするレンズ豆にぴったりなんです。」

"ピート香の強いウイスキーでは、すでにスモーキーな特徴を持った料理と一緒にするべきではありません。"

ADRIAN BOELLE

人生を賭けた情熱

エイドリアンとソサエティの縁は彼がエディンバラ大学の学生で、ザ・ヴォルツのバーテンダーだったころにさかのぼります。 「私はザ・ヴォルツに勤めた一年間でウイスキーのいろはを学びました。最も繊細な鼻を持つ人々に教わり、メンバーの方と会話をし、そしてなにより世界で最も楽しいウイスキーの数々を自分自身でテイスティングすることによって、人生を賭けて追うべき情熱の対象を見出したのです。

ウイスキーが披露してくれる数々のフレーバーを見つけること、これに勝る喜びがあるでしょうか。 目を閉じて香りを嗅げば、陰鬱なエディンバラの霧が晴れて全く別の世界が現れます。

活気のあるスパイス市場、浜辺での焚き火、熟れたトロピカルフルーツの盛り合わせ…ウイスキー愛好家にとって、心の目を開けば可能性は無限に広がるのです。

エイドリアンはいくつかのビッグブランドのアンバサダーを務めたのち、娘のシルナ、妻のガウリと共にヴィーガンのスタートアップビジネスを立ち上げます。妻も娘もシェフであり、料理研究家であり、写真家です。 「私達の才能を引き立て合うためのベストの選択だったと思っています。私達家族は皆、素晴らしい食事や、ヴィーガンについて知ってもらうこと、より環境にやさしいライフスタイルを広めることに情熱を感じているのです。」

"私たちは皆、素晴らしい料理を大切にし、植物由来のライフスタイルを楽しく広め、より良い未来のために世界中の人々を結びつけたいと考えています。"

ADRIAN BOELLE

心と体を温める

会話を楽しんでいて気づかなかったのですが、私達はあっという間に一皿目を食べ終わっており、シルナとガウリがメインディッシュを運んできてくれました。サフランで香り付けされたバスマティライスにグリーンピース、クローブ、スターアニス、サルタナレーズンが入っていて、上に刻んだコリアンダーの葉が散らされています。その横にはまるごとローストされた、赤いマサラがかかったカリフラワーが添えられています。 シェフのガウリが料理の説明をしてくれます。

「これは心と体を温めるヒマラヤの山岳地方のごちそうなんです。」

「カリフラワーにマサラをかけてゆっくりとローストすると、とてもおいしくなります。甘く、ナッツのような香りになり、やわらかくなりますが、やわらかすぎず、わずかなスモークの香りがマサラのスパイスで強調されます。 サフランライスと一緒に召しあがれば、自然がくれた香りを一番の形で楽しめる、まさにマハラジャのごちそうとなるでしょう。」

この料理のために選ばれたウイスキーはディープ、リッチ&ドライのフレーバー・プロファイルから選ばれた華やかな一杯です。セカンドフィルのトーステッド・バットにウイスキーはインドのスパイス、乾燥したデーツ、サルタナレーズン、チョコレート、濃厚な糖蜜の香りを感じます。

エイドリアンが解説してくれます。 「このウイスキーはリッチな一皿にぴったりです。まるで天才的な指揮者が素晴らしいオーケストラを指揮するように、全てのプレーヤーのレベルが一段上がり、お互いがハーモニーを奏でるのです。」

"想像してみてください。壮大なオーケストラが、独創的な指揮者によって高揚され、各プレーヤーから新たなレベルを引き出し、天使のようなハーモニーを奏でている姿を。"

ADRIAN BOELLE

人生に捧げる抒情詩

私達の晩餐の最後に運ばれてきたのは、ケサールマンゴーとラズベリーのヴィーガンチーズケーキです。ケーキのベースの生地はカカオオートとフラックスシード(亜麻仁)でできており、チョコレートやナッツの香りがフルーツの軽く爽やかなフィリングと組み合わさることで完全なバランスになります。まるでゴア湾で夕日を眺めているような気分です。

スイート、フルーティ&メロウのフレーバー・プロファイルから選ばれたバーボン樽のファーストフィルのウイスキーがそこに加われば、人生に捧げる抒情詩が完成します。ウイスキーのトロピカルフルーツやシトラス、バニラファッジやスパイスの香りがチーズケーキと響き合います。シルクのようななめらかなテキスチャーが口を満たすと、もっと味わいたくなってしまう不思議なペアリングです。

シルナは彼女の情熱について語ってくれました。 「私はみなさんにヴィーガンの可能性をもっと知ってもらいたいと思っています。家で作るのにややこしい材料や道具を使わなくて済むレシピを開発しているんです。ヴィーガンは人生をより楽しく、味わい豊かで、ハッピーにしてくれるはずです。 」

「私達の店を「マイエレファントキッチン」と名付けたのは、象は大きく、強く、愛情深く、悪いものから守ってくれ、高貴で草食の生き物だからです。象の足(foot)は大きいですが、環境負荷(footprint)は小さいのです。私達が奪い合うことではなく与え合うことに価値を見出す世界がひろがれば、きっと象もハッピーになるでしょう。」

シルナ、ガウリ、エイドリアンと共に色彩豊かで心を満たす食事と、完璧なペアリングのウイスキーを口にすると、これほど理にかなった話はない、という気持ちになります。 ソサエティのウイスキーを片手に幸せそうに踊る象のイメージを頭に浮かべながら、私達は素晴らしい夕食に感謝して家族に別れを告げたのでした。

シルナ、ガウリ、アドリアン・ボエルはスイスを拠点に、ヴィーガンの生活を啓蒙する著作活動やイベントを主催しています。 ▽詳しくは以下のurlまで▽ https://myelephantkitchen.com/ https://www.instagram.com/myelephantkitchen/ https://www.instagram.com/eat.click.travel/

トロピカルフルーツやシトラス、バニラファッジ、スパイスの香りがドラマに響き渡ります。 絹のような素晴らしいテクスチャーで、口の中をコーティングし、さらにグラスが進みます。