ファミリーツリー

ウイスキーの系譜

SMWSのメンバーであるデイビッド・デイリー(David Daly)は、旅好きなウイスキー愛好家で、どこかに旅行をするたびに、その地方で生産されたウイスキーを試飲することにしています。現在、彼は、スコットランドやアイルランドからのDNAを伝承しつつ、その後の世代に独自のアプローチを取り入れた数々の新しい蒸留所の世界中での台頭を称賛しています。

スコットランドとアイルランドは、どちらがウイスキーの母国であるか争っているともいえますが、実際には歴史的な視点で見てどちらの国もそれに相当するとは考えられません。これらの国の子供であるといえるアメリカや日本、インドなどの国での歴史もすでに進んできています。ある意味では、これらの国は次の世代の親なのです。 スコットランドとアイルランドは、悪気のない諍いはやめて、孫たちに優しく微笑むべきなのです。それらの国のいくつかをみていきましょう。

チェコスロバキア

ベルリンの壁崩壊以前に、東欧ではすでにウイスキーの蒸留が行われていました。それは仲間同士だけの間のニッチな市場として存在している方がよいものだと思われていました。外部からの情報は限られていたため、入手できる本を利用して、プラドロ(Prádlo)蒸留所は、最高級の鋳鉄製のハンマーミルからブランド名をとって開業しました。 今日でも、様々な熟成期間のウイスキーが入手可能です。私は、23年熟成のハンマーヘッド(Hammerhead )を試飲してみましたが、ビールのように独特で味わい深いウイスキーが製造されていることを知り、感激しました。新鮮な干し草の香りにヘーゼルナッツのアクセントが加わり、ピーナッツペーストとナツメグの香りが口の中に広がります。オーク風味で、カリッとしたキャラメルのかかったケーキのようなフレーバーが目を覚ましてくれます。

ジョージア

最近トビリシ(Tbilisi)を訪れた際に、2つの蒸留所があることを知りました。ジムシャー(Jimsher )とアレクサンダー(Alexander)という蒸留所です。2つ目でもそれとなくわかったものの、特に1つ目を訪れた際に、2種のウイスキーが以前は地域のブドウ品種に使用されていた樽で仕上げられていることを知りました。その2種のウイスキーは、ツィナンダリ(Tsinandali)とサペラビ(Saperavi)です。前者は豊かな果実の甘みがあり、最後に軽いウッディーなメンソールの香りが感じられます。そして後者は、胡椒をまぶしたバナナのような濃厚な口当たりがあり、長く爽やかなカンパリ風の霞のような幕を下ろしてくれます。 この美しい国への私の次回の旅に向けて、西のクヴェモ・カルトリ地方へ行き、アレクサンダー蒸留所を訪問して、私が手掛け始めたことを締めくくろうと思っています。

アイスランド

バイキングたちは何世紀にも渡ってイギリス諸島に居続け、多くの継承物を私たちに残してきましたが、彼らの子孫がグレンズ山脈を覗き込み、ウイスキー造りに手を染めたのは近年になってからのことです。スウェーデンとデンマークが最も有名かもしれませんが、フィンランドのテレンペリ(Teerenpeli)が織り出す魔法を忘れてはいけません。 最先端の技術革新として、アイスランドの西部では、アイムヴァーク(Eimverk) 蒸留所のフロキ・アイスランド・ヤング・モルト (Flóki Young Icelandic Malt)という名のウイスキーの製造に、泥炭の代わりに乾燥した羊の糞が使用されています。それは、根本的には、全ての有機物を単一の有機物分解に置き換えているというものです。ブレンデッドモルトとシングルモルトを比較すると、似たような原理であることがわかります。

インドネシア

2019年12月にバリにいた私は、バリムーンズ・オムラーク・ウイスキー(ali Moon’s Omrach whisky)を少量試飲してから、そのボトルを手に取りました。これはゲール語で琥珀を意味します。この食材が豊富で賑やかでのどかな島で造られたこの製品は、卵を入れすぎたケーキのように感じる人もいます。ミックスにはカラメルが入っています(カラメル色素E150aは不使用です)。すべての旅は最初の一歩から始まるものですので、寛容にお願いいたします。 それは疑いようのないような甘さで、ラム酒と変わらないとと思っても仕方がないかもしれませんが、私たちの品揃えの中には他にも欠かせない定番品がありますので、ぜひ時間をかけてお楽しみください。

イスラエル

ローマは都市というよりも美術館だと呼ばれることがあります。では、イスラエルは何と呼ぶことができるのでしょうか?地図上で歴史的に有名な場所ばかり見ていると、3カ所の蒸留所観光案内センターを提供している成長産業のことには気付かないかもしれません。 そこで私が最初に体験したのは、ミルク&ハニー ディスティラリー(Milk and Honey Distillery)で造られているトリプル・カスク・ヤング・シングル・モルト(Triple Cask Young Single Malt)でした。その若さからか、ピストルの連打のように仕上げに使われる3つの異なる樽の特徴を一気に表現するので、まだらな味わいを覚えました。甘さと、塩見、マイルドなピートの味がほぼ同時に感じられました。 この蒸留所は今では6年目を迎え、現在の生産物はよりニュアンスのあるものになっています。近いうちに訪れて、彼らのエレメンツ・シリーズの中の他のものも試飲したいと思っています。 まるで祖国の祖父母のように、それを夢みることができるところならどこでもウイスキーを造るという芸術が遠い離れたところで開花することを祝りましょう。私たちは、そんな願いを送るべきです。私たちは、これらの新しい生産物を支援していくべきなのです。そして、彼らの新しいアイデアと、革新的なアプローチを。彼ら自身の豊富な経験と地元のテロワールが結びついた生産物を。素晴らしい継承物を共有し、成長し続ける家族のような彼らといっしょにぜひ幸せになりましょう。