蒸溜所プロフィール

スカイ島の 新しいスピリット、 トラベイグ

スカイ島には200年もの間1つしか(少なくとも合法の)蒸溜所はなかった。だから、島の南に新たに蒸溜所が落成し稼働し始めたことは時の流れの上で必然だったともいえる。このトラベイグ蒸溜所の様子と、お披露目されたウイスキーについてリチャード・ゴスランがレポートする。

写真:HORST FRIEDRICHS、提供:トラベイグ蒸溜所

トラベイグからはKnoydartを望むことができます。

前回トラベイグ蒸溜所の蒸溜責任者ハミシュ・フレーザーに会ったのは、2016年初頭の暗い冬の日だった。彼は湿地に立つ建物の中の自分のオフィスに私を招き、紅茶をふるまった

停電中で部屋は寒かったが、ありがたいことにガスがあったので、鍋で湯を沸かして淹れた熱い一杯とともに今後の展望を語ってくれた。

それから五年を経て、環境は見違えるほど変わった。トラベイグ蒸溜所は春の日差しの中で輝き、ハミシュも泥だらけの日々は過去のもの、といった様子で幸せそうに見えた。

Hamish Fraser氏が新しい作品をノーズ

トラベイグの特徴的な wash and spirit stills

「まったくもって泥に半分浸かっているような場所でしたよ! 古い農場の建物はまるでごみの山で、庭には沼がありました。 建物を修復して土地を整形するのは一大事業でしたが、なんとかやってのけました。」

ハミシュの言う農場の建物というのは、19世紀初期に建てられた廃墟で、指定建造物のため元の形に敬意を払いつつ修復することが求められていた。指定建造物ということは、建物の形を保ったまま、その中に収まるように蒸溜所の設備を設計しなければいけないということだ。そのために屋根は着脱式のものとしてデザインされた。

ビジターセンターの責任者アン・オローンが蒸溜所内を案内してくれ、この建造物そのものがトラベイグが作るスピリッツのキャラクターを規定していると語った。

「この蒸溜所では粉砕、糖化、発酵の工程は全て新しく付け足された建物の中で行われています。」ちょうどその部分を案内しながら彼女は言う。新しい建物だが、クラシックなパゴダ屋根の意匠のせいで、元々の農場の建物とも違和感がない。 「農場の建物の中には、一対の蒸溜釜があります。ご覧の通り、建物の中に収まるように蒸溜釜の形が丸くて短いんです、ラインアームの角度も、屋根の高さに影響を受けています。」ネックの部分が通常より太くなることで、還流が起こりやすくなり、ゆっくりとした蒸溜プロセスは液体が蒸溜釜の銅の壁に触れる時間がその分長くなることを意味する。

トラブヘイグで働く9人の蒸溜師のうちの1人、John MacKinnonと一緒にスチルルームにいるHamish Fraser氏

蒸溜釜はサー・イアン・ノーブルとレディー・ルチラ・ノーブル夫妻の名を冠している。サー・イアン・ノーブルは農場の建物の元々のオーナーであり、蒸溜所のアイディアを温めていたし、トーレベイグ蒸溜所の建築許可も得ていた。しかし彼は2010年に亡くなってしまい、妻のルチラはイアンの遺志を継いでもらうためにモスバーン社に土地の使用を許可したのだ。「思い(スピリット)は一つなんです」とアンは言う。

肝心のウイスキーはどうだろう。私が訪れた時、トラベイグ蒸溜所は最初のシングルモルトウイスキー、2017レガシーシリーズをリリースしたばかりだった。コンチェルト大麦麦芽を使い、55-60ppmまでピート香をつけ、ファーストフィルのバーボン樽に入れて熟成させたウイスキー。

フェノール値はボトリングされる頃には16ppmまで下がるが、それでもしっかりとピートの効いた一杯はスカイ島のスレイト半島という出自を自ら語りかけてくる。

トラベイグの蒸留器は、「The Journeyman Project」というラベルのもと、将来のリリースに向けて実験的なバッチを開発しています。

蒸溜所の隣にあるknock城(Caisteal Camus)

wortの進み具合を確認するDistillerのIona MacPhie氏

そしてなんという素晴らしい景色だろう。整地され、雨靴が必需品でなくなった蒸溜所は、ノック城址や海峡を挟んでノイダートやマレーグを臨む、スコットランドでも有数の風光明媚な場所だ。

蒸溜所は地元のコミュニティでも重要な役割を担っている。蒸溜所はさまざまなバックグラウンドを持つ地元民を9人、蒸溜を担うスタッフに育てるべく雇用することを早い段階で決めた。彼らはみな訓練を受け、一人前の蒸溜スタッフとして認められるようサポートを受けている。一方で「ジャーニーマン・プロジェクト」と銘打って、彼らに自由に実験的なバッチを作らせてもいる。

トラベイグ蒸溜所はタリスカー、ラッセイ、アイルオブハリス、ジュラ蒸溜所を含む「ヘブリディアンウイスキートレイル」の一員でもある。どのようなルートを通って行っても、トーレベイグ蒸溜所はスカイ島にとって、そしてスコッチウイスキーにとっても歓迎すべき新しいメンバーだろう。

OPENED

2017

OWNER

Mossburn Distillers

STILLS

2 (1 wash and 1 spirit)

WASHBACKS

8 Douglas fir of 8,000 litres

WASH STILLS

8,000L

SPIRIT STILLS

5,050L

WAREHOUSING

Off-site with plans to build on site

CAPACITY (PER YEAR)

400,000L

FERMENTATION

72-100hrs

LOCATE TORABHAIG ON A MAP

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