知識

アルコールに勝つ

カスクストレングスのソサエティボトルはもう試されましたか? 強いアルコールに最初は驚かれるかもしれません。スコッチ・ウイスキー・リサーチ・インスティテュート(以下SWRI)のフランシス・ジャック、そしてソサエティのアンバサダーに楽しみ方を聞きました。

記事: MADELEINE SCHMOLL

美しい琥珀色の液体が入ったグラスに顔を近づけ、鼻を深く入れて香りを嗅ぐ。慣れ親しんだはずのウイスキーテイスティングで、カスクストレングスのウイスキーから感じられるのは繊細な香りの代わりにくしゃみや涙を催すほどのアルコールの強い刺激です。ウイスキーとの出会いとしては理想的ではないかもしれませんが、カスクストレングスのウイスキーを飲む時はどのようにすればよいのでしょうか。

強い刺激に対峙するために、まず必要なのは知識です。 「このような反応は、鼻口腔の防御機能です」とフランシスは言います。「アルコール成分の多いハンドジェルを使った時と似ています。アルコールが水分を奪う働きを、鼻や口は痛みとして感じるのです。」 グローバルブランドアンバサダーのジョン・マッチェインは、強いアルコールに対して体が反応することを知っておくことが重要だといいます。 「強いアルコールを入れることに対して体は抵抗します。飲み慣れた人ですら、一日で最初にアルコールを飲む時には三叉神経になんらかの反応がでます。ある化学者はこれを体からの赤信号と表現しました。」

準備をしておく

グローバル・ブランド・アンバサダーのジョン・マッケインは、この認識が重要だと言います。「まず覚えておいていただきたいのは、強いアルコールを飲もうとすると、体がそれに挑戦するということです」。

「飲み慣れた人でも、程度の差こそあれ、三叉神経の反応が出ることがあります。ある化学者は、これを "体が赤旗を振っている "と表現しました」
"まず覚えておいていただきたいのは、強いアルコールを飲もうとすると、体がそれに挑戦するということです"

JOHN McCHEYNE

知覚の問題

さまざまな要因によって刺激を感じやすいかどうかが決まるとフランシスは言います。 「私達は知覚の個人差について調査しています。その人の好みとは無関係に、ある特定のフレーバーに対して敏感か、アルコールの刺激に対して敏感か、といった知覚の差があるようです。」

「アルコールに対する反応は、遺伝的な要因と個人の飲酒習慣によっても決まってきます。 アルコール度数の高いスピリッツをよく飲むのであれば、そこまで刺激を感じることはないでしょう。あまり普段から強いお酒は飲まずにいきなりカスクストレングスを飲めば、より強く刺激を感じるでしょう。」 SMWSアンバサダーのオラフ・マイヤーも同意する。 「ウイスキーを初めて飲む人に質問するのは、『どんなお酒が好きですか?』ということです。これによってどのくらいの強さのアルコールに親しんでいるかがわかるのです。もしワインやジントニック、ラムコークといったカクテルをよく飲むというのであれば、カスクストレングスはおろか40%のアルコール度数でも強く感じるでしょう。」

許容レベル

SMWSのアンバサダーであるオラフ・マイヤー氏も同意見です。「ウイスキーを初めて飲む人への最初の質問は、たいてい『どんなアルコール飲料を楽しんでいますか』です。これは、その人のアルコールに対する耐性やレベルを測るためです」と彼は言います。

「ワイン、ジントニック、ラム&コーク、ウォッカ&レモネードなどが好きだと言われたら、カスクストレングスはおろか、アルコール度数40%のウイスキーを飲んだことがないのだとわかります」。

アルコールに慣れるには

アルコールの刺激に強くなくても、カスクストレングスを楽しむ方法はあります。 ジョン・マッチェインは準備の大切さを説きます。 「鼻から香りを嗅ぐ時に口を空けると刺激がやわらぎます。左右の鼻で順番に嗅ぐのもよいでしょう。鼻は左右で感じ方が異なるためです。口の中でウイスキーを転がすことで、唾液が刺激をやわらげてくれます。このようにすることでアルコールに感覚器官を慣らせるので、二杯目以降は同じ手順を踏むとより飲みやすく感じられるでしょう。」

逆に推奨されないテイスティング方法とはどのようなものでしょうか。ジョンに聞いてみました。 「みなさん香りを嗅ぐ前にグラスをくるくると回します。カスクストレングスのウイスキーでこれをするとアルコールがグラスの上まで立ち上がり、そこに鼻を入れてしまうと30秒ほどで嗅覚が麻痺してしまいます。」 それでは加水するのはどうでしょうか。 「加水すると香りが変化します。加水することで香りが薄まると思われるかもしれませんが、逆により鮮明に感じることができるようになります。最初に焼けるような刺激を感じても、その後で豊かな香りを感じられるでしょう。」とフランシスは言います。

"ウイスキーに水を加えると、味の分離の仕方が変わる"

FRANCES JACK, SWRI

「SWRIの研究者だけでなく、業界のプロフェッショナルも同じようにしています。例えばブレンダーはウイスキーのサンプルに加水することで鼻が麻痺するのを遅らせ、よりたくさんのサンプルを嗅げるように工夫しています。 加水を推奨する他の理由として、香りが違った立ち上がり方をするということが挙げられます。エステル香やフルーツの香りはより顕著になります。」

ジョンによれば、「最適な加水の量もその日その時で異なります。少しずつ水を加えて、その時のご自分にとってのベストを見つけるのが大切です。同じウイスキーを同じ加水量でテイスティングしても、時と場所が異なれば違ったものに感じられるでしょう。」

大胆に、力強く

結局のところカスクストレングスのウイスキーの特徴はその高いアルコール度数にあります、とフランシスは言います。

「アルコール度数によってフレーバーの感じ方は異なりますから、カスクストレングスのウイスキーと普通の度数のウイスキーでは、違ったフレーバーに感じられるでしょう。これこそが、カスクストレングスのユニークさと言えるかもしれません。」

BEYOND EXPECTATIONS

このユニークさについてSMWSアンバサダーのアラン・ウッドは自身の経験からこのように語ります。「私が最初に飲んだカスクストレングスのSMWSウイスキーは蒸溜所No.7によるファーストフィルバーボン樽で15年熟成されたボトルでした。

おそるおそるウイスキーを嗅いでみると、バニラやシナモンの香りを想像していたのですが、まるでグラスの中からウイスキーが五感に襲いかかってくるような刺激がありました。口にしてみると、それは今までと全く違う体験でした。今ではこのキックが大好きになっています。」

アラン・ウッドが伝授する、

カスクストレングスの楽しみ方

No.1

香りを嗅ぐ

鼻はグラスから離した状態で優しく嗅いでください。わずかな香りと、その下に何か潜んでいるような感覚があるでしょう。

No.2

少し舌に乗せる

舌をアルコールの刺激に慣らすためにも、目はつぶらずにウイスキーを口に運んでください。

No.3

テイスティングする

舌が焼け付くようなアルコールの刺激に慣れてくると、ウイスキーがその姿を現しはじめ、 繊細な香りを感じられるでしょう。

No.4

加水する

加水することでまったく新しい香りがたち現れます。