テクスチャーについて話す

The rough and the smooth

加水も、冷却濾過もされていない、ソサエティのシングルモルトのような口当たりは他に存在しないでしょう。ドライなものからねっとりしたもの、またその他のあらゆる可能性を秘める様々なフレーバープロファイルのテクスチャーの驚くべき展開を楽しむことができます。 ギリー・バシャン(Ghillie Başan)は、ウイスキーを美味しい料理と組み合わせることがウイスキーの食感や味わいに劇的に影響し得ることに注目しています。

私も口当たりを満喫できる人間のうちの一人です。私はチョコのかけらを噛んだ後、しばらく口に含んで溶かし、味が口に広がるようにしています。しかし、そのおいしさの中で重要なのは、クリーミーでシルキーで滑らかな食感と、その風味がどれだけ長く口の中に残るかということです。チョコの塊を口の中に放り込んで、噛んで飲み込むだけでは、感謝の気持ちは足りないでしょう。風味のストーリーなら、私はまだこの倍はできます。なぜわざわざチョコレートを食べる話をするのでしょうか?

価値を知るためのステップ

シングルモルトウイスキーのテクスチャーというものを理解するにはいくつかのステップがあり、それらを踏むことでテイスティングの世界に旅立つことができます。まず最初に、明るい金色や深い琥珀色などの「色」に気が付くと思います。大抵はそれから樽の種類と熟成期間がわかります。そして、グラスの表面のしずくを眺めて楽しんでいると、香辛料、フルーツ、ハチミツ、トーストしたナッツ、サドルソープ、塩気のある海辺の風、ダンネージ式貯蔵庫の土の床などを想起する香りが鼻を通してある種の驚きや予感を与えてくれます。それぞれの人が個人の経験に応じてその人なりにアロマを解釈するのです。

新しい次元

蒸溜酒で舌を湿らせると、他の風味が現れてくることがあります。そしてたった一滴の水が蒸溜酒の味を和らげることができます。しかし、口の中でしか味わえない新しい次元というものがあります。それはテクスチャーです。腰のある、クリーミー、オイリー、カリカリした、ドライな、ジューシー、とろけるような、繊維質の、スポンジのような、重い、水のような、などのさまざまな感覚がそれぞれのウイスキーの楽しみ方に影響してきます。テクスチャーと快感は切り離せないものです。 専門家によると、ウイスキーのテクスチャーは熟成の過程で形成されるのだそうです。オークのタンニンは、雄鹿の枝角の上質なベルベットで口の中がコーティングされるような感覚をもたらします。同じく樽から抽出されるバニリンは、クリーミーで滑らかなテクスチャーでベルベットのコーティングを強化し、口当たりの甘美さと余韻を拡張します。そして、エステルによるフルーティーなニュアンスも加わる上に、オイリーでバターのような質感を口全体に広げてくれます。

感覚的な快感

テクスチャーというものには、ある程度、先入観があると思います。この話の最初に戻って、どのように語られていたのかをみてみましょう。フィレステーキを例に挙げてみましょう。メニューには「ハイランドの年中屋外を自由に歩き回り、牧草で育ったエステートの子牛の群れから採れた牛肉のフィレ」などと書かれているのではないでしょうか。「テロワール」のストーリーがすでにフィレには細かい霜降りがあり、柔らかく、美味しく、ジューシーであることを暗示しています。焼いた時のスモーキーな炭の香りとそれに伴うクリーミーなソースの甘みを感じる前に、すでに予感と期待が共にそこにあります。アロマがあなたを惹きつけ、ナイフは肉にきれいに切り込まれ、最初の一口は柔らかくてジューシー、ステーキはあなたの期待に応えてくれます。あなたはそれが今まで食べた中でも最高のステーキだと思うでしょう。ハイランドの牛は年中自由に歩き回って生きていたのですから。でも、もしもステーキの噛み応えが強く、硬くて、筋張っていたらどうなることでしょう?失望から逃れられません。テクスチャーと快感は密接に繋がっているのです。

旅を楽しんで

では、これがウイスキーのテイスティングや料理との組み合わせとどのように関係しているのでしょうか?テクスチャーと風味はどのように区別するのでしょう?私の答えは「できない」です。風味のないテクスチャーを求めるのなら、アヒルの足の軟骨を齧ってください。しかし、シングルモルトのテクスチャーに料理を組み合わせたいのであれば、ある程度風味を加える必要があります。その理由は、それらは口の中では区別できないからであり、それはまたテイスティングにストーリー性を与えるものだからです。 私が世界中からウイスキーコレクター、ウイスキーライター、ウイスキー愛好家、バーテンダーを呼んでウイスキーと料理のペアリング会を主催するときは、ゲストに料理の準備に参加してもらっています。これは、風味とテクスチャーを探求する過程と推論を理解するのによい機会となり、最終的にテイスティングは私の屋根のスレートの上に集まった一連のゲストたちと一緒に行われます。それは、一口飲むごとに、料理の風味とシングルモルトのテクスチャーが引き立て合ったり、ぶつかり合ったりして、私たちの口の中の感覚全体がウイスキーがするのと同じように食の旅に旅立てるように構想されています。 ここでは、SMWSの6つのフレーバープロファイルの中から私が選んだものをご紹介します。それぞれのフレーバープロファイルは、ソサエティのテイスティングパネルによって実証されたフレーバーの特徴とそのテクスチャーを基に構成されています。ウイスキーのテクスチャーをより楽しんでいただけるようなフードペアリングを採用しています。

Ghillie Başan

ギリーのテクスチャー & フレーバープロファイルペアリング

芳醇, 濃厚 & ドライフルーツ

フレーバー:トフィー、糖蜜、キャラメル、凝縮したドライレーズンとカレント、オレンジピール テクスチャー:腰のある、粘り、ドライフルーツのしっとり感、皮の噛みごたえ

デーツトリュフのローストピスタチオとオレンジピール添え

ローストしたアーモンドやピスタチオとデーツのしっとりとした果肉を混ぜ合わせて、濃厚で粘りのある生地ができたら、少量のハチミツを垂らし、シナモンで味付けして小さなボールに成形します。みじん切りにしたローストアーモンドやピスタチオと同じくみじん切りにしたオレンジピールを混ぜて、その上にボールを転がしてコーティングします。ナッツのカリカリ感と他の素材のモチッとした食感のコントラストが楽しめ、オレンジピールは食感だけでなく風味もしっかりと与えてくれます。

スパイシー&ドライ

フレーバー: クローブ、サンダルウッド、唐辛子、ココア、ラム&レーズン、トーストしたココナッツ、ナツメグ、パイプタバコ、鉛筆 テクスチャー: 樹皮、脆い、カリカリ - カリッとして脆く軽く噛み応えのある素材を使うと香辛料の風味やトースト感がアップします。

ナツメグ風味バターココナッツチップス

軽く焦げ目がつくまでバターでソテーしたココナッツチップスは、脆く、カリカリしていて、軽く歯ごたえがあり、完璧なテクスチャーですが、砕いたナツメグ(挽いたナツメグではなく)をひとつまみ加えることで、食感はそのままで、クローブ、樹皮、サンダルウッドなどの香ばしい樹脂のような香りと味を与えることができます。バターとトーストしたココナッツの香りが甘い香りを漂わせるので、あとは塩を軽く振って手でそのまま食べれば完璧です。唐辛子のアクセントが欲しいときは、アレッポ唐辛子をひと振りするとよいでしょう。

甘い、フルーティー& メロー

フレーバー:リンゴ、アプリコット、オレンジ、スイカなどの甘い果物、レモンメレンゲパイの酸味、煮詰めた甘菓子とピニャコラーダの甘味 テクスチャー:軽い噛みごたえ、または「切れ味」(ターキッシュ・ディライトやオレンジかライムのピールのような)、とろけるような、クリーミー、口の中のコーティング感、炭酸のお酒 - 甘い果物が「噛みごたえ」と「クリーミー感」、さらに炭酸のニュアンスとともに食感をひとつにまとめます。

アプリコットのラブネ詰めレモンシロップ煮、ドライライム添え

シロップ漬けにした干しアプリコットは、噛みごたえのある食感で、フルーツの風味も豊かです。アプリコットをまず水に浸し、その水とレモン汁、レモンの皮を削ったものを使ってシロップを作ります。盛り付けには、それぞれのアプリコットに大さじ1杯のラブネ(モスリンで6時間かけて漉したヨーグルト)を詰めると、クリーミーな食感が加わってアプリコットの噛み応えが強調されます。仕上げに、炭酸飲料のようにツンとくるドライオマーンライムをアプリコットに振りかけます。

若々しく&軽快

フレーバー: ミントまたはユーカリ、ピリッとした酸味、酸っぱい、フレッシュ、刺激のある テクスチャー:葉の感覚、ワックスかゴムのような食感 - 若い葉とワックスのようでジューシーなグリーン・ジュニパーの実がフレッシュ感を強調し、この2つの要素が滑らかで優しい、オイリーまたはとろけるようなものにまとまります。

スモークサーモンとグリーンジュニパークリームのフィンガーフード、ガーリックマスタードとガーリックリーフ添え

スモークサーモンの側面を太い指くらいのサイズ(スライスではなく)に切り、ガーリックマスタード(アリアリアペティオラタ)の葉かイラクサを上にのせ、そして実とにんにくを叩き潰して作ったグリーンジュニパークリームにレモン、生クリーム、はちみつを混ぜたものをてっぺんにティースプーンで1杯のせます。手で全体を持って、タコスのように食べましょう。爽やかな風味をアップさせるには、カタバミ(青リンゴの皮のような味)やミントを添えてみてはいかがでしょうか。

熟成感&濃厚

フレーバー: 香辛料やフローラルの香り、フルーティー、甘い、バニラ、キャラメル、ポーチドフルーツ、ウッディー、ローストナッツ テクスチャー:果肉感、シロップ感、ジューシー、長く残る

ポーチド梨のサフランとシナモンシロップ漬け

これらの洋ナシの輝くような黄金色は、このプロファイルに該当するウイスキーと相性が良いはずです。軽い噛みごたえでジューシーな食感は、記載されている全てのフルーツのフレーバーを包み込み、フレーバーシロップが香りを引き立てます。梨は、よい色と食感を得られるまで3時間ほどそっと漬けたままにしておく必要があります。そのまま食感を楽しむのはもちろん、塩味の効いたハードチーズと組み合わせてコントラストをつけたり、トーストしたクルミで木の香りやローストしたナッツの香りをほのかに加えてもおいしいです。

ピーテッド

フレーバー:スモーク、ハーブ、ラベンダー、タール テクスチャー:肉付きがいい、またはパリッとしている

鹿肉のウイスキー漬けのワイルドガーリックリーフ包み、ラベンダーシロップ沿え

鹿肉や牛フィレまたはロース肉を、強いスモーキー風味を与えるためのブラックカルダモンの実と、ブラックペッパーコーン、ブラウンシュガー、塩と合わせて、ピーテッドウィスキーで10日間漬け込みます。熟成した肉を熱したフライパンまたは炭火焼きグリルで表面を焼き付け(火の中で軽く巻いて、風味を良くしたい場合は炭を払う)、薄くスライスし、ワイルドガーリックの葉で包んでシャキシャキとした食感を与えて、最後にラベンダーシロップを少量かけて仕上げます。 テクスチャーを引き立てるために、私がローワン・ジンを作るときにできるジン漬けのローワンベリーを加えることで、風味だけではなく食感を重視した口当たりにし、包み込んだ鹿肉を甘いシセリーのような香りの良い葉っぱの上にのせて盛り付けます。

ギリー・バシャンはスペイサイドを拠点にライター、放送作家、食の人類学者として活躍し、ユニークなウイスキーと料理のペアリング体験を主催するSpirit & Spiceを運営しています。詳細は以下をご覧ください。

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