コラム

ウイスキーの音

Felipe Schrieberg

「ウイスキーに命を吹き込む方法は無数にある。しかし、モルトにふさわしいメロディーを見つけるのと同じくらい簡単なことも、ときどきある。」と、ドリンクライター兼ミュージシャンのフェリペ・シュリーバーグは語ります。

写真: Bob Dylan with a dram of his Heaven’s Door whiskey

親密な場所で人々が肩を並べて押し合うことが可能であった、パンデミック以前は、ウイスキーテイスティングの遊びを好んでやっていました。ウイスキーを出して、テイスティングしてもらい、コメントしてもらいます。そして次のテイスティング用のウイスキーを出すときに、全員に目隠しをし、ライブバンドに音楽の演奏を始めてもらいます。そして何も言わずに2番目のウイスキーをそこにいる大勢の人に飲ませて、コメントしてもらいます。

必然的に、音楽の力によってウイスキーに命が吹き込まれました。テイスティングした人々は常に最初のウイスキーよりも2番目のウイスキーを好み、ウイスキーの完璧な伴奏として音楽を歓迎しました。 ひっそりと、私は彼らが気づかないうちに同じウイスキーを2回出したのです。音楽の力のおかげで、「2番目の」ウイスキーの優れた品質を納得させるという仕事は、彼らの脳が勝手にやってくれたわけです。

強力なコンボ

私たちはウイスキーを飲むとき、毎回異なる状況で楽しみます。その時の気分、飲む時間帯、その前に食べたもの、脳に送られる香りや味の感覚を表す電気信号を混乱させる可能性のある他の多くの条件によって、同じウイスキーでも味や香りが異なることがあります。

音楽はまさに、状況を変化させる最も強力な要素の1つであり、耳を通して適用されるウイスキーフレーバーの強化剤です。良質なウイスキーとふさわしい音楽によって素晴らしい気分になれるなら、その組み合わせは確かに強力です。そのため、ミュージシャンとしての経験を生かして、ギグ、イベント、メディアプロジェクト、独自の共同ボトリングを通じて、音楽とウイスキーを可能な限り多くの方法で組み合わせたデュオ、「The Rhythm and Booze Project」を始めました。

音波を作る

この関係を理解したのは私たちが初めてではありません。ポーグス、ウィリーネルソン、モーターヘッド、アンスラックス、さらにはヒップホップの巨匠ドレイクでさえ、ウイスキーに関わっている、または関わってきました。 ただし、他の二人の音楽の巨匠は、そのウイスキーの製造(または、これらの例では複数のウイスキー)に対して、より包括的な手法をとっています。 メタリカのブラッケンドは、伝説的なマスターブレンダーのデイブ・ピクレルと共同で製造しました。ブラッケンドは、バーボン、ライ麦、その他のウイスキー原酒をブレンドし、ブランデーカスクで熟成。熟成したウイスキーは、メタリカの曲が毎日24時間スピーカーで流される、熟成庫で貯蔵。理論的には、音波の力が液体の振動につながります。これは、液体と木製の樽の間の接触が増えることを意味します。メタリカの力で、強烈な味わいが生まれます。

ディランのウイスキー

ボブ・ディランもウイスキーのゲームに参加しており、彼の音楽以上のものを引き出しています。 彼はスピリッツ・インベストメント・パートナーバーシップ(エンジェルズエンビ―を創設)と協力して、ヘブンズ・ドアのウイスキーの製造を支援しました。 ヘブンズ・ドアのマスターブレンダーであるライアン・ペリーは、ディランがミュージシャンとしてのレガシーだけでなく、アーティストとして貢献できるという理由で、彼と一緒に仕事をしたかったため、パートナーシップの売り込みに勝ったと私に伝えました。 「私たちはボブの他の部分、彼の絵、彼の溶接のアートに触れている。彼の音楽よりもさらに触れている」と彼は言います。 「しかしこれらすべては、彼が関わることでもたらされる彼の芸術性の一部なのです」。 ディランのアートはヘブンズ・ドアのボトル・ラベルを飾っていますが、そのデザインも彼の溶接のアート作業に基づいています。 ヘブンズ・ドア限定版の10年熟成ウイスキーも、ディランの歌詞シートを表現していました。 これらの例は、ウイスキーと音楽を組み合わせる可能性に関しては氷山の一角にすぎません。 出来るだけ多くの感覚を刺激することが最も記憶に残る体験につながるという単純な理由から、これらは確かに可能な限り最も強力なウイスキーの組み合わせの1つです。 ウイスキーについては何ら変化を加える必要はなく、ウイスキーを向上させるのに最適な方法です。

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