パイオニア精神
一段上の知識
ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティは、シングルカスクウイスキーやウイスキー原酒への愛着にとどまらず、飲んでいるのがどんなウイスキーかについての理解を深める主導的な役割を果たしてきました。 我々は常に、ウイスキーへの渇望と同時に、知識への渇望を大事にしてきました。
1983年当時を回想できる方は、当時を思い浮かべてください。 そしてウイスキーにまつわるシーンを想起してください。 地元の店やパブでどんなウイスキーが並んでいましたか。
ウイスキーをどのようにして飲みましたか。 シングルモルトよりはブレンデッドウイスキーが多かったのではありませんか。 当時、シングルカスクから取り出したカスクストレングス・ウイスキーなど想像できたでしょうか。 ソサエティの発足40周年を間近に控えて、今日のウイスキーの世界がどう変わったかに加え、ウイスキー界の発展におけるザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティの役割を振り返りたいと思います。
ソサエティ発足当時を振り返って、ウイスキー評論家のデーブ・ブルームは記します。「1980年代初頭のシングルモルトは知識層の保護区でした。 知識層とは芸術家、詩人、医者、弁護士(エディンバラのことですから大勢いました)などの夢見る知識人です。しかしリースの奥深く( 1980年代初頭と思われます)では、信奉者や異端者、伝統を守ろうとする人たちの一団が結集し、計画を練っているという噂がありました。」
リースで結集し計画を練っていた一団がザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティを創設しました。 彼らは、シングルカスクからウイスキーを瓶詰めするにとどまらず、ウイスキーに対する知識と評価を高めるには、樽の中身についての理解の共有が不可欠だと知っていました。
ソサエティの創設者ピップ・ヒルズはそのエッセー集スコッチウイスキーをめぐるスコットランド人で、ソサエティ発足前のウイスキーの状況について回想しています。 「すべてのスコットランド人はウイスキーを飲むか、飲んでいるはずと思われていました。 飲んでいるウイスキーはブレンデッドウイスキーでした。 どこで作られたか、どうやって作られたかを気に掛ける人は僅かでした。 スコットランド人の国際的なアイデンティティに占めるウイスキーの著名さに関わらず、熟成プロセスはおろか、製造場所についても知らないことがスコットランド人にとっての普通だったのです。」 1983年以降ソサエティはウイスキーに関する知識を会員への提供サービスの主要な柱に位置付けており、ボトルやテイスティングノートにウイスキーの熟成年数や特徴に関する詳細な情報を記載し、ウイスキーのベストな香りの楽しみ方や味わい方、さらに、ウイスキー製造工程の様々な側面を反映しています。
どのくらい前からウイスキーを楽しんでいるか、どのようにこの素晴らしいウイスキーに遭遇したかにもよりますが、何人かの仲間にとっては、これまでのウイスキー探求の旅や、現在のウイスキーの楽しみ方を形作るのに、ソサエティが主導的な役割を果たしたのではないかと思います。」とソサエティのセラーマスターであり、ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ・オーストラリアのニューサウスウェールズ州マネージャーでもあるアンドリュー・ダービッジは語ります。 ウイスキーの知識は常にソサエティの会員誌Unfilteredの中心的なテーマで、この会員誌は業界の専門家やインサイダーをインタビューしてウイスキーの生産と魔法のありとあらゆる側面を追っています。 大麦品種から酵母の種類、発酵時間、使用する水、蒸溜法の違いに至るまで、Unfiltered誌はウイスキー製造の全工程に踏み込んできています。
2008年11月の最初の復刊号の熟成の研究で、ハイランドパークのラッセル・アンダーソンは語りました。 「すべての答えがわかっているわけではありません。私が生きている間には無理でしょう。ウイスキー製造は「ブラックアート(魔法)」です。いつまでもそうあり続けるよう願います」 ウイスキー製造のブラックアートの分析が続けられることは間違いないので、会員は将来にわたりUnfiltered誌でさまざまな洞察やエンタテインメントをお楽しみいただけるでしょう。 そして、何がシングルカスクやシングルモルトをかくも特別なものにするかのミステリーを深掘りすればするほど、ロマンチックさが失われることをご懸念の会員のために、スコッチウイスキー研究所の調査部長ジェームズ・ブロスナンに締めくくっていただきます。 「私にとっては、スコッチの解明が進めば進むほど、物語はさらに面白くなる」 私たちはそれに乾杯します。