SMWS 101

ちょっと変わった ウイスキークラブ

ユニークな起源を持つザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティは、今までさまざまな活動をしてきました。そこで今回は、私達がなぜこれほど豊富で素晴らしいウイスキーのコレクションを皆様にご紹介できるようになったのか、そしてSMWSのウイスキーを理解していただくための手引をご案内したいと思います。

写真: PETER SANDGROUND AND MIKE WILKINSON

新規会員のあなたは、メンバーシップカードを手に、パートナーバーか私達のウェブサイトを訪れ、数ある緑のボトルを前にしています。 でもどうしたことでしょう。 ボトルには蒸溜所の名前がないのです。 ラベルにつけられた色の帯はそれぞれのウイスキーで違うようです。 どうすればよいのでしょうか。 まずはリラックスしてください。 ソサエティのボトルは全て確かな嗅覚を持ったテイスティング・パネルが認めたものですから、どれを選んでも間違いはありません。 もちろん皆様それぞれ好みの違いはあるでしょうし、私達は皆様の好みに応えようとしています。

テイスティング・パネル

テイスティング・パネルは、ソサエティが創始者ピップ・ヒルズのエディンバラの自宅キッチンで生まれた当時から存在しています。 ピップはテイスティング・パネルを「ウイスキーを飲んだことがあって、文章力に長けた人たち、つまりかなりゆるい条件で集まったバラエティ豊かなグループ」と自著の『創始者の物語』の中で呼んでいます。

テイスティング・パネルはウイスキーのサンプルを評価すると同時に、ウイスキー業界で初めてシングルカスクやシングルモルトを表現するための語彙を発展させてきました。 1980年代前半、ウイスキーは「どれだけ古いか」と「どこで造られたか」だけで説明され、風味についての言及は殆どなかったのです。 それを変えたのがソサエティでした。

テイスティング・パネルの役割

テイスティング・パネルの役割は、目の前のサンプルがソサエティのボトルにする価値があるか見極めること、そしてそのウイスキーのテイスティングノートを用意することです。 テイスティング・パネルの顔ぶれは時の経過と共に変化しますが、ソサエティのエキスパートと業界の権威によって構成されているという点、そしてテイスティング・パネルの役割はずっと変わっていません。

著名なウイスキーライターのチャーリー・マクレーンと、「ウイスキーの吟遊詩人」であり20年間委員長を務めているロビン・レインは古株のテイスティング・パネルです。 「創成期からソサエティに関わっているパネラーもいて、その経験と知識を活かして活動しています。」とパネルを構成し、審査するサンプルを選定するスピリッツマネジャーのユアン・キャンベルは言います。 「新しくパネラーが参加する時は、既存の会員の推薦が必要で、委員としての資質を審査されます」

審査の過程

テイスティング・パネルはサンプルを評価するために定期的に集まります。 色を調べ、香りを嗅ぎ、ストレートと加水した状態でウイスキーをテイスティングします。 参加者はそれぞれのサンプルについて議論し、求められる水準に達しているかを決めます。 点数付けをしてフレーバープロファイルを入力しますが、テイスティングしたサンプルを合格させる義務はありません。 「選定の基準として、品質が高いことは大前提ですが、ユニークなもの、興味深いものを探しています。色々と語りたくなってしまうようなウイスキーです。」とユアンは言います。

テイスティングノート

委員会が審査をしたのち、委員長が全員分のノートを集め、ノートの内容を一つにまとめ、そのボトルを象徴するような名前をつけます。会員の皆様は印象に残ったウイスキーの名前やテイスティングノートについて覚えていらっしゃることでしょう。 テイスティングノートに聞いたことのない説明を見て、調べてみた方もいるかもしれません。 「チャーリーや私のような年代でエディンバラに育った人間は、ウイスキーの香りをかぐだけで小さい頃のことを思い出します」とロビン・レインは言います。 「思い出す光景は具体的で、大体が子供のころ与えられた薬か、スコットランドのお菓子です」 全てのリファレンスがスコットランドに関係しているとは限りません。 テイスティング・パネルは常に国際的で、男性と女性のメンバーがいます。 それぞれのパネラーが、自分が想起するリファレンスについて語るのです。 「テイスティングノートにとって大切なのは、わかりやすく、イメージしやすく、そして正確であることです。ちょっと楽しい要素がはいっているとなお良いですね。」とロビンは言います。

"私たちは、ソサエティー・ウイスキーの候補として、ユニークで好奇心をそそるもの、つまり色々と語りたくなってしまうようなウイスキーを探しています。"

ユアン キャンベル

科学的な知見

40年近くウイスキーを選定し、テイスティングノートを作ってきたテイスティング・パネルはそのプロセスを熟知していますが、ウイスキーの品質を見定めるための新たな手法を探求しつづけています。 そのような考えのもと、ソサエティはスコッチ・ウイスキー・リサーチ・インスティテュート(以下SWRI)に参加しています。 SWRIは業界が出資する技術研究機関です。 テイスティング・パネルはSWRIの香りや味覚・嗅覚を科学する専門家と共にそれぞれの香りの特徴をより正確に測ろうとしています。

暗号を破る

そのようなプロセスを経たパネルのお墨付きのウイスキーがあなたの手元まで届きました。 でもラベルに書かれている情報には一体どんな意味があるのでしょう? そこでもう一度時間をさかのぼり、最初のソサエティのボトル「Cask No. 1.1」が情熱的なメンバーの小さな集まりにお披露目された時の様子を振り返ってみましょう。 現在まで続くナンバリングの仕組みは最初のボトルから始まりました。 1つ目の数字は蒸溜所の番号、2つ目の数字はその蒸溜所からソサエティがボトリングしたシングルカスクの番号を指します。 最初のボトリングリストを見ると、No. 1.1と1.2はグレンファークラス蒸溜所のものであることが明記されています。 No.2.1と3.1はスペイサイドとアイラとあるだけで、どこの蒸溜所で造られたものかはわかりません。 ナンバリングシステムはこのように始まり、今ではSMWSを特徴づけるものになっています。 詳しい会員の方は、番号を見ただけで蒸溜所の名前が浮かんでくるかもしれません。

なぜ蒸溜所の名前を記載しないのか?

どうしてこのようなナンバリングシステムが生まれたのでしょうか? 当初は我々にシングルカスクを供給してくれる蒸溜所のブランドを守るためでした。 蒸溜所は安定した品質のウイスキーを作るために大変な労力をかけ、厳密なフレーバープロファイルを用いて何百ものカスクを熟練の職人がブレンドしています。 一方でブレンドする前のウイスキーは、樽によって性格が異なり、その性格の偏りが輝きを放っているのですが、最終的に彼らのブランドを冠する商品となるウイスキーとはだいぶ違うものもあるのです。 発足当時のソサエティは、彼らの名前をラベルに記載しないことで、ブランドの毀損を不安視する蒸溜所を納得させていたのです。 シンプルだったナンバリングシステムは年月を経てソサエティが扱うボトルの種類が増えると同時に複雑になっていきました。 A-アルマニャック、B-バーボン、C-コニャック、G-グレーンウイスキー、GN-ジン、R-ラム、RW-ライウイスキーといったように、今ではアルファベットを使った区分けが追加されています。 最初のボトル、Cask No1.1がリリースされた1983年からナンバリングシステムはずっと使われてきました。 これまでどおりこれからも、数字を刻んだウイスキーがたくさん皆様の元に届けられるでしょう。

自分好みのフレーバーをみつける

慣れている会員の方でも、毎年リリースされるたくさんのボトルを前にどこから始めればよいか戸惑います。 12のフレーバープロファイルは、毎年100種以上販売されるソサエティのウイスキーから好みの1本を見つける参考にしていただくために用意されています。 「私達のフレーバープロファイルは意図的にそれぞれのカテゴリーが広い範囲をカバーしています」とユアン・キャンベルは言います。 「一つ一つのウイスキーについての詳細な説明はテイスティングノートにまかせて、フレーバープロファイルはこんなウイスキーが飲みたい、という要望に素早く応えることを目的としているのです」

どのような意味が?

ウイスキーの特徴を共通言語に落とし込むという考え自体は新しいものではありません。 ブレンダーが使うフレーバーホイールはそのよい例で、「革のような香り」「薬のような香り」「バニラ香」といった言葉は複雑な香りの地平を旅する道標となります。 テイスティングノートほど刺激的ではないかもしれませんが、こういった客観的な説明はウイスキーの正確な情報には欠かせないものです。 フレーバープロファイルをウイスキーに対して抱く第一印象の参考に、テイスティングノートはウイスキーの核心に迫る記録としてお役立てください。