知識

Aスコッチモルトウイスキーソサエティはシングルカスクがもたらす歓喜を称賛する。だが、それだけではないと、スピリッツマネージャーのユアン・キャンベルは説明する。

最も重要なのは

シングルカスクだ

ソサエティの初恋はシングルカスクのウイスキーだ。カスクストレングスで、冷却濾過されていない、最も純粋な形のウイスキーである。それは常に究極の一品だ。しかし、我々が重視する「シングルカスク」の基準に満たしていないからといって、素晴らしいウイスキーを生み出し、ボトリングする機会をむざむざ逃すのは到底、受け入れがたい。近年、そんなケースが何回かあった。

最も近い例では、私たちは「カスクストレングス、シングルカスク」のウイスキーを重視するソサエティの厳格な信念にこだわることが本当に正しいのか、自問自答することになった。カスクストレングスではないという理由で、あるいはシングルカスクの厳密な定義に当てはまらないからという理由で、ソサエティの会員が素晴らしいドラムを味わう機会を否定する必要があるだろうか?

最近で言えば、今はもうなくなってしまったスペイサイドの蒸溜所で作られた25年物のウイスキーをソサエティの会員に提供する機会があった。ずば抜けて素晴らしいドラムだったが、それは以前に統合されたシングルモルトのものだった。つまり、シングルカスクではなかった。

そのウイスキーを試飲した後、私たちはこの一品をすぐさま買い取ってソサエティのボトルに加えなかったら、会員に大変失礼だと判断した。テイスティングパネルの嗅覚の専門家たちも同じ意見だった。ウイスキーの質が十分高ければ、シングルカスクかどうかは関係なく、ソサエティの会員が入手できるようにするべきではないだろうか?

飽くなき創造性を求めて

これは、ボトリングする熟成ウイスキーがシングルカスクかどうかという問題に限った話ではない。

独立の気風を重んじるソサエティは、素晴らしいフレーバーを自由に探し求め、独創性をさらに高める機会を逃さない。その中には、独自の追加熟成プログラムの開発や、契約蒸溜所との提携、実験的なブレンドモルトのボトリングでの独創性発揮が含まれる。

私たちは、追加熟成の重視が素晴しいウイスキーのボトリングという形で素晴らしい結果をもたしていることに満足している。また、私たちはバーボン、シェリー、ワイン、ブランデー、ラム、ビールなど幅広いカスクタイプを試す機会を生かしている。そのおかげで、ソサエティの会員に提供するウイスキーのストックが品質、多様性の両面で充実した。

会員からの好意的なフィードバックに加え、ウイスキー業界でいくつもの最高賞を受賞したことで、私たちの創造性や専門性が実を結んだことを実感している。

今、ソサエティは新たな独自のスピリッツの開発に着手した。さまざまな蒸溜所と提携し、カスタムメイドのレシピや規格に基づいた独自の蒸溜を実践し、将来、ソサエティの会員に届けるべく熟成も管理している。

また、「Exotic Cargo/エキゾチック・カーゴ」「Peat Faerie/ピートフェアリー」「Old Fashioned/オールドファッションド」「The Beachcomber/ザ・ビーチコマー」「Big Swirl/大渦」 などのブレンドモルトも開発し、会員たちにシングルカスクウイスキー以外の選択肢も提供した。多くはアルコール度数50%前後で、値段も手頃だ。ブレンドモルトの開発は、新たなフレーバー体験の追及において、より想像力豊かになる機会を私たちに与えてくれた。

実験的アプローチ

シングルカスクのボトリングの代わりに、ブレンデッドモルトを定期的にリリースすることで、新しいフレーバー体験の探求においてさらに想像力を働かせる機会をメンバーに提供しています。

私たちは、自分たちに何ができて何をすべきでないかを定める掟よりむしろ、フレーバーとキャラクターを大事にしたい。

ユアン・キャンベル

包括的な品質保証

要するに、私たちはこれまで以上に創造性を高めたいと考えている。もしかすると独自の蒸溜所を作るかもしれないし、より魅力的なブレンドモルトを開発したり、小ロットでの実験を増やしたり、追加熟成においてさらなる独創性を発揮したりするかもしれない。何より、私たちが提供するあらゆる種類のウイスキーやフレーバーに、より積極的に関わっていきたいのだ。

シングルカスクウイスキーは今までも、そしてこれからも常に私たちの根幹だ。だが、自分たちの可能性をそこに閉じ込めてしまってはいけない。

最も大事なのはフレーバー

私たちは、自分たちに何ができて何をすべきでないかを定める掟よりむしろ、フレーバーとキャラクターを大事にしたい。1983年にソサエティが発足した時と同じように、包括的な品質保証こそが常に私たちの原動力だ。創設者のピップ・ヒルズはこう言った。「重要なのはウイスキーのクオリティであって、どのようにして生み出されたかではない」

ソサエティの会員が何を飲むにしても、私たちと同じようにこう思ってほしい。「こいつは最高に美味い」。私たちは、そんなウイスキーを届ける機会が待ち遠しくてたまらない。