ビール、ウイスキーにカレー

聖なる三位一体

カレーを食べるときはビール以外試したことがない?そろそろ考え直してはどうだろうか。<Unfiltered誌> はエディンバラでシェフをしているトニー・シンとウォーキー・トーキー醸造のマイケル・ジョンストーンと共に、ソサエティのウイスキー、クラフトビールとスパイス豊かなインド料理の三者の完璧な取り合わせを探求した。

写真: MIKE WILKINSON

トニー・シンのキッチンの匂いは魅惑的だ。それもソサエティのウイスキーボトルの栓を抜き、缶ビールを開ける前からだ。

リース生まれのシェフのキッチンは色鮮やかで、今日の料理に使うスパイスが並んでいる。ナスが既に直火で、あるいはトニーのバーナーでグリルされていて、重いピートのフレーバープロファイルのウイスキーを切望するような柔らかいスモーキーさが空中を漂う。 有難いことに、ウイスキーも、それに合うビールも揃っている。ザ・ヴォルツのバーカウンターの向こう側の常連でリースにある新設のウォーキー・トーキー醸造の共同創始者でもあるソサエティのマイケル・ジョンストーンの提供だ。

写真: Tony Singh

トニーとマイケルは二人で、インド料理と完璧にマッチするウイスキーとビールとの三位一体の組み合わせを探索中だ。ソサエティのボトル3本とマイケルの新しい醸造所からの3種のビールを用意してある。トニーが3種類のインド料理の準備でキッチンで忙しくしている間、シェフと醸造者はそれぞれの作品の間のシナジーを分析する。

トニーは言う。「料理と飲み物の最適なペアリングの探求という風には考えていないんです。いいウイスキーはいいウイスキーです。ある料理には合うし、別の料理には合わないかもしれません。結局はその人の好みの問題です。探求の旅でもありますので、旅にはいいガイドが必要です。同じ通りを二人の人が歩いて、一方は美しい建築について語り、もう一方の人は誰かがそこで刺された話をするかもしれません。ガイド次第なのです。」

写真: Michael Johnstone

マイケルが、ヘリオット・ワット大学で醸造・蒸溜の理学修士課程を修了後に、共同創始者のジョエル・ソンダーソンとウォーキー・トーキー醸造設立を思い立ったのは、伝統的なエールのスタイルへの新しいアプローチを人々に追及させたいというのが動機だった。 マイケルは言う。「ジョエル・ソンダーソンと私は、伝統的なエールのスタイルをより新しいものにアップデートして、私たちのテイストや経験に合うように改造していきたいと考えました。カレーと言えば、安いラガーが合うとブランディングされてきましたが、今普通の消費者はそれ以上を期待していると思います。ウイスキーは料理体験に全く違う側面をもたらします」 トニーの料理の準備が整い、いよいよ料理、ウイスキー、ビールの三者のテイスティングの開始だ。

聖なる三位一体 最初のテイスティング

THE DISH: NATIVE SCOTTISH OYSTERS WITH HIGHLAND MUTTON VURHA

THE BEER: IT TAKES 2 – DOUBLE DRY-HOPPED AMERICAN DOUBLE IPA (DDH DIPA)

THE WHISKY: SPICY & DRY – CASK NO. 26.137: CHASING CHAMELEONS

「牡蠣には塩気がありますが、それがタマリンドソースの甘くて熱い香りと結びつき、スパイシーなパテのコリアンダーとフェンネルのハーブの香りと一緒になっています。

TONY SINGH

トニーが殻付きスコットランド産オイスターにマトン・ヴルハ(濃厚なタマリンドソースをトッピングしたスパイシーな肉団子炒め)をサーブする。 「オイスターの持つ塩気がタマリンドソースの甘辛い香りと、スパイシーな肉団子のコリアンダーとフェンネルのハーブの香りとうまくマッチします」とトニーは言う。 マイケルはこの料理に、スパイシー&ドライ なフレーバープロファイルのウイスキーと、彼がビール愛好家の至高の喜びと言う、<It Takes 2> double IPAを合わせた。 「最初の煮沸工程でホップを入れ、発酵タンクに移した後、再び加える。それによって苦みと甘味がバランスし、4種のホップがトロピカル、柑橘系、樹脂とマツの香りをもたらす。 ビールと蒸溜所26番のスパイシー&ドライ なウイスキーの組み合わせは絶妙だ。 「モルトからの穀類の風味がしっかりウイスキーに出ているが、加えてフルーツのような風味があって、料理ももちろんだが、ビールともよく合う」とマイケルは言う。

ABOVE: Tony’s oysters paired beautifully with a Spicy & Dry flavour profile and a double IPA

「幅広いスペクトルのフレーバーを持っている」とトニーは評する。「唐辛子に辛味と一連のフルーツのフレーバーがある。スパイス系に対し野菜系の香りだ。甘いクリーミーなココナッツの風味まで入っている。絶妙だ!」

聖なる三位一体 二つ目のテイスティング

料理:ベインガン・サモサ ビール:3RD CRAIC – アイリッシュ・コーヒー・スタウト ウイスキー:重いピート – 蒸溜所コード10:甘いスモークサーモン・ジャーキー

次に登場するのは、力強いフレッシュミントのチャツネを添えた焼きナスで作ったベインガン・サモサだ。マイケルは、ナスのスモーキーさに、アイラフェスティバル用の蒸溜所10番からのソサエティの小バッチボトル <甘いスモークサーモン・ジャーキー> とロバストなアイリッシュ・コーヒー・スタウト<3rd Craic>を合わせた。 「サモサは少し油っぽいですが、チャツネのフレッシュミントの香りがナスのスモーキーさを引き立てます」とトニーは説明する。

ABOVE: Michael and Tony try a Heavily Peated whisky with the baingan samosas, along with an Irish Coffee Stout

ウォーキー・トーキーのアイリッシュ・コーヒー・スタウト<3rd Craic>の名前は、ジョエルのふるさとのアイルランド語の「楽しいひと時」とともにコーヒー豆を煎るときのファーストとセカンドの「クラック」に因んでいる。 「アイリッシュスタウトの根幹はローストした大麦ですが、発酵工程後に地元で焙煎したコーヒーを添加することで、思いがけないコーヒーのフレーバーに、(圧倒されるというほどではありませんが)ハッとさせられます」とマイケルは言う。 <甘いスモークサーモン・ジャーキー>は蒸溜所コード10からの重いピートフレーバーのウイスキーで、オロロソとペドロヒメネスのシェリー酒ホッグヘッド樽や焼き直したホッグヘッド樽のセカンドフィルを組み合わせて作られた酒だ。いい選択と思われる。ウイスキーのテイスティング・ノートに、現実に「ナスとインドのスパイスで作ったナス漬け(brinjal pickle)」が言及されている。マイケルは語ります。「7年ものですが、フレーバーがとにかく豊かです。他の料理やビールなら圧倒してしまうかもしれません。ただ、スモーキーな料理と、揚げた生地の油が、ビールともウイスキーとも見事に合っています。ビールが泡立ちすぎて口を刺激するようでもいけません。スムーズかつクリーミーであるべきで、炭酸ガスが溢れていてはいけません。」 トニーも言う「お酒が料理を引き立てているのがわかります。冷えたラガーで味を洗い流すのとはわけが違います。酒が料理のスパイスのフレーバーを際立たせています」

「ペストリーのおかげで少しオイリーな口当たりになり、チャツネの爽やかな緑の香りが茄子のスモーキーさを引き立てている」。

TONY SINGH

聖なる三位一体 三つ目のテイスティング

料理:南インドのマサラ・ランゴスティーヌ ビール:ONE-ER – HAZY BLONDE ALE ウイスキー:甘い,フルーティー&メロー – カスク番号 9.188:Out of this world / この世のものと思えない

料理の最後は、スイート・ガーリック・マサラとテリチェリーペッパーで調理した南インドのランゴスティーヌだ。トニーは言います。「ランゴスティーヌとトマトとニンニクを大量に使ったスイート・マサラのソースからの甘みで溢れています。ランゴスティーヌの代わりにキング・プローンでもできます。手が汚れて食べづらいですが、その価値は十分あります」 料理の甘みが、マイケルが選んだカスク番号<9.188: Out of this world / この世のものと思えない>の甘い、フルーティー&メローのフレーバープロファイルのボトルとも見事に調和する。ビールは、ウォーキー・トーキーの濁ったブロンドエール、<One-er>だ。 マイケルが解説する。「アルコール度が低くて飲みやすく、親しみやすいエールです。ペールモルト、ピルスナーモルト、小麦とスコットランドのオーツというグレーンの組み合わせに、カスケードとシトラの2種類のホップを加えて、トロピカルで、豊かなフルーツフレーバーの香りを引き出しています。パッションフルーツとマンゴーの香りがあって、 9.188:Out of this world / この世のものと思えないの香りとフルーツサラダのように組み合わさります。ウイスキーはオーソドックスなスペイサイドで、麦類、モルトの甘さに加え、少し草の香りがあります」

ABOVE: Tony adds the final touch to his masala langoustines

「バターのショートブレッドやペイストリーに、素敵な柑橘系レモンの香りもします」とトニーも言う。「えびの甘さとの組み合わせも見事ですが、ペイストリーともとても合うと思います」 フィンガーボールを回し、ウイスキーとビールを飲みほしたシェフと醸造者は、新しいフレーバーのフロンティア探しの試みの評価で一致していた。ウイスキーとビールのペアリングは皆知っているし、楽しまれているが、もしカレーを食べるときはラガーしか飲んだことがないというなら、そろそろ考え直してご自身の三位一体を試されてはどうだろうか。

"海老の甘みとの相性は抜群ですが、ペストリーとの相性も抜群です。"

TONY SINGH