蒸溜所プロフィール

グレンタレット: 輝く時

新しいオーナー、新しい外観、そして新しい誕生日。 今シングルモルトウイスキーの世界で脚光を浴びるグレンタレット蒸溜所を取材しました。

記事: RICHARD GOSLAN 写真: COURTESY OF GLENTURRET DISTILLERY

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所有者が変わっても外観はほとんど変わらない蒸溜所

グレンタレット蒸溜所の敷地内には、世界一ネズミを獲ったネコとしてギネスにも登録された「ネズミ捕りのタウザー」の銅像があります。 けれども「あの鳥」の銅像は見当たりません。 フェイマス・グラウスのブランドの影ではなく、独立したシングルモルトウイスキーとしてグレンタレットは再出発するのです。

蒸溜所の再出発は2019年3月にこのブランドがエドリントンからラリックと実業家ハンスユルグ・ヴィースによるジョイントベンチャーへ売却されたことから始まります。 グレンタレット蒸溜所はラリックの洗練された美しさをまとい始めます。新しいテイスティングルーム、ミシュランの星を獲得したマーク・ドナルド氏がシェフを務めるグレンタレット・ラリックレストランがその代表格です。

ボトルにも底面にラリックの名が刻まれ、まるでアート作品のようなデザインに生まれ変わりました。「スコットランド最古の蒸溜所」という肩書もより強固に改められました。記録保管人の調査によれば、パースシャー地方クリエフの隣に「ホッシュ」の名で稼働していた蒸溜所よりもさらに12年古い1763年には貸借の記録があったのです。

Bob Dalgarn0は、マッカラン社での30年の経験を経て、グレンタレット社に入社しました。

このような歴史は伝統的な小規模蒸溜を続けてきた技術とそのような伝統を守ってきた人々の情熱とともに、グレンタレットの新たなる三位一体の一角となったのです。 マシュー・ターナーが蒸溜所のカフェで話してくれました。 「いままでとは大きな違いです。ここを訪れる人はフェイマス・グラウスのキーモルトとして私達のウイスキーの話を聞いてきました。今では、グレンタレットがスターなのです。 ウイスキー自体はずっとそこにありました。30年を超えて熟成しているものもあり、質も大変高いグレンタレットのウイスキーは、倉庫に何十年と眠り続けていたのです。それでも、世界のウイスキー愛好家にとってグレンタレットの名前には今まで馴染みがなかったのです。 隠れた宝石だったと言えますね。私達の仕事は、表面のホコリをはらって磨きをかけ、あらためて世界にお披露目することです。」

グレンタレットは去年の9月、マッカランからやってきたウイスキーメーカー であるボブ・ダルガーノによる新しいシリーズを発表しました。シリーズには、ノンエイジのトリプルウッド、ピートの効いた10年物、12年物、15年物があります。またグレンタレットは車メーカーのジャガーとコラボレーションして、1961年のジュネーブモーターショーでローンチされたE-Typeを記念して265本の限定ボトルを販売しました。マシューは今後のコラボレーションについてもほのめかしています。

Glenturret is a compact and traditional distillery

「このユニークなブランドとその物語をもっと知ってほしい、と私達は情熱を傾けてきました。目標は、次の5年でグレンタレットを最もリスペクトされるシングルモルトに育てることです。非常に洗練されてエレガントなブランディングをしていますが、その核に常にあるのはクラフトマンシップなのです。」

グレンタレットの歴史の中で一度も揺るがなかったのはそのクラフトマンシップです。 見学ツアーに参加すると、この蒸溜所が非常にコンパクトなことがわかります。一組のポットスチルで蒸溜されるアルコールの量は34万リットルほどです(昨年はわずか21万リットルでした)。糖化槽はいまだにラウザーとよばれる木べらで手作業で撹拌されています。発酵はじっくりと90-100時間かけて行われ、蒸溜もゆっくりと、甘いトフィーとりんごの香りのする軽いエステルのスピリットに仕上げられます。ピーティングの工程は一年に6週間かけて行われます。

グレンタレットでは、マッシュをかき混ぜることも含めて、すべてが実践的です。

マシューは言います。 「私達は小さなロットでの製造にこだわっています。いままでも、これからもです。 高い品質のシングルモルトを限られた量で生産する蒸溜所であり続ける、というのがラリックのアプローチなのです。変わったことといえば、ブランドアウェアネスを広め、新しい市場を開拓するビジネスがスピードアップしたことでしょうか。」

他の可能性としては、もしかすると将来、ラリックが所有するワインの樽で熟成させたウイスキーが作られる日がくるかもしれません。 それまでしばらくの間はタウザーから任務を引き継いだグレンとタレット二匹の猫が蒸溜所を守り続けるでしょう。 といっても、ネズミたちもライチョウと共に蒸溜所から姿を消してしまったようです。

FOUNDED

1763

OWNER

Lalique and Hansjörg Wyss

STILLS

2 (1 wash and 1 spirit)

WASHBACKS

8 Douglas fir of 6,000 litres

WASH STILL

12,000L

SPIRIT STILL

7,000L

MOUSERS

GLEN (pictured) & TURRET

CAPACITY (PER YEAR)

340,000L

FERMENTATION

90-100hrs

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