インダストリー・インサイダー

カスクの管理人

2014年からソサエティの黄金の液体貯蔵は、スコットランド西側にある保税倉庫に保管されている。業界のベテランであるジム・カーベリーは、ここでメンバーに届けられる液体の準備が整うまで、微睡中のカスクの棚に目をひからせる。写真: PETER SANDGROUND

ジム・カーベリーはスコットランドのワイン・スピリット業界でどれほど長く働いてきたかをソラで言える。その1970年台前半の暗黒の日々にさか上る頃を語るが、その「マジック」な活動が止まることはなかった。

「ワイン輸入業者のために仕事をしたのが始まりで、ワインを自分たちでボトル詰めしていました。いろいろなことができた時代ですが、これは現在では不可能です。」と語る。「特別なブルゴーニュワインやボルドーワインを持っていると、多くの問い合わせがありますが、実際にはボトル詰めをしてそれにラベルを張っている自分たちは別に特別でも何でもありませんでした。その頃『スペインボジョレー』のようなワインまで購入しましたが、あり得ないことでした。スピリッツも自分たちでボトル詰めしていましたが、現在の厳しい法律では不可能です。アルコール含有率が37.5%のウイスキーをボトル詰めすることでライバルたちの1歩先を行けると考えたのですが、何ヶ月もしてクリスマスの子供たちがするようにボトルを振ると、白い結晶が見えました。もちろん今では法律で禁止されています。時代が違います!」

ジムは新しいカスクの出荷を確認する

全人にとってありがたい事に、マジックは既に過去のものとなっている。ジムがシーグラムの保税倉庫の仕事に移った時、コンプライアンスとサーベイランスで出来た世界に参入した。現在その場所には税関吏が常駐し、全ての出入りにあらゆる検査のレベルが存在する。

「輸出用のコンテナーを積み込む、あるいは輸入コンテナーを受け取る時、コンテナーには税関シールがついたまま届き、それを倉庫の管理人が取り外すことはできません。」とジムは語る。

「HM C&E (皇后陛下の間接税務局)の制服を着た税収補佐官『監視人』、で知られる人が不可欠です。その人が封印を開け、入っているものを確認します。また積み込みの時には、中に積まれ出されるもの全てを確認します。」

SMWS(ザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ) の財宝発見

その後ジムはジョン・G・ラッセルのロジスティック・グループに採用され、このグループは1980代半ばに倉庫業務を追加していた。カスクのコレクションを自設の倉庫に統合し、長期にわたる買収と熟成計画を模索していた時、SMWS がやって来た。

「非常に興味深い計画で、倉庫の準備、SMWS との仕事をしながら、運び込まれるカスクの種類に驚かされました。」とジムは言う。「味見はできませんが、樽を見ることはできました。それも 法外な価値のある樽です。商業的な価値だけでなく、世界中の人たちが愛し、評価する何かがありました。」

ソサエティはこの敷地に現在1万の大樽を有し、これはおよそボトル数にして3百万、ここに130以上の蒸溜所が選出されている。カスクはラックシステムに保管され、スピリッツのマネージャーであるユアン・キャンベルがサンプルを採取し、追加熟成期に必要であればウイスキーの移動をさせることができる。

「SMWSは素晴らしいラックシステムに投資しました。つまり全てのカスクへのアクセスが可能なのです」とジムは語る。「ここを運営するスタッフ一同も育ちましたし、運営する人全員が、各自に染み込んだ製品に関心を持っています。」

現在ジムは素晴らしいシングルカスクのウイスキーの管理人をしており、コカ・コーラにウイスキーを垂らして飲んでいた頃から比べると月日が経った。

「気分が悪くなりそうですが、そうやって飲んでいました。」とジムは認める。「でもパブで賭けに勝ちました。『ジョニーウォカーの黒ラベルとジョニーウォカーの赤ベルを注文して、両方に同じ量のコカ・コーラを入れても、どちらのブランドかを判別できましたから』と語った。今はもっとスノッブ!だから、誰かが同じようなことをしているのを見たら、『本当か!』と言うでしょうが。」

「今はモルトしか注文しません、本当にSMWSの仕事は面白いと思います。経験から学ぶのは大切です。」

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