メンバープロフィール
サム・ヒューアン
「アウトランダー」のスターで、ウイスキーの熱狂的ファンでもあるサム・ヒューアン。このほどグラスゴーのバース・ストリートにあるSMWSのメンバー・ルームで開催される、ヴィック・ギャロウェイのウイスキートーク・モルト&ミュージックのポッドキャストシリーズに、彼が参加してくれた。この編集済みの抜粋編では、サムがウイスキーへの情熱の高まり、SMWSの評価、ウイスキーや、より広い蒸溜酒の世界についての彼の現在および将来の計画について語っている。
PHOTOS: PETER SANDGROUND
VG: あなたのウイスキーの歴史について教えてください。どんな風にウイスキーに出会い、今のようにウイスキーの熱狂的ファンになったのですか。どこから始まったのでしょう?
SH: あなたも同じかと思いますが、初めては確か小さなミニボトルで、バスの停留所の陰でこっそり飲んだような、熟成もしていなくて美味しくもない、ただ男らしくなったように感じられた、そんな体験です。 ファンになったのは、スコットランド出身の親友とロンドンに住んでからのことです。近所のバーでバーンズナイト(詩人ロバート・バンズの誕生日を祝う)があって、私たちはスコットランドが恋しくて、そう、かなりのホームシックでした。そこでシングルモルトウイスキーを注文しました。そのときが正しく酔った初めての体験で、私は単純に「うわ、凄いっ!」となったわけです。その1杯が私をスコットランドへ連れ戻してくれました。その1杯が私にスコットランドを思い出させてくれました。 奇妙ですが、ウイスキーに感情的に反応したんです。人にはそういうことがあると思います。分かりますよね、ウォッカや他の蒸溜酒と違って、ウイスキーだといろいろなことが起こり、さまざまな想像が掻き立てられるんです。
VG: あなたはザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティの長年の会員ですね―ソサエティについて どんなところを高く評価していますか。
SH: そうですね、発売されるウイスキーを見るといずれもとても個性的で、他とは異なっています。驚くような名前があって、一つ一つのウイスキーに素敵な味の説明がついています。 ウイスキーの世界の新参者だったり、違うウイスキーを試してみたい人にはとても分かりやすいです。製品の名前と説明を読んで、それから説明と同じフレーバープロファイルを確認できますから。でもメンバー・ルームもまた素晴らしいと言っておかなければ。今はグラスゴーにいますが、(リースにある)ザ・ヴォルツは美しいですし、(エディンバラのニュータウンにある)クイーン・ストリートに時々ふらりと立ち寄るのも気に入っています。
メンバーとして、いち早く個性的なボトルを試せるのもいいですね。 時々、ザ・ヴォルツに人を招待して一緒に何杯か飲むのですが、そうすると相手が「これはボトルで買わないと」となるんですよ。
写真:サム・ヒューアン
VG: あなた自身のウイスキーブランド、ササナックについて教えてください。ササナックはイングランド人に対する呼称で「アウトランダー(よそ者)」という意味だと考えている人もいるようですが?
SH: 一発で当てられましたね! ササナックはイングランド人やよそ者に対する軽蔑的な呼称で、それがこの名前にした理由です。1つにはドラマ「アウトランダー」で、私の演じる人物が愛情を込めて妻を呼ぶときに「ササナック」を使うんです。 ドラマでも意味が変わったと思いますし、スコットランドも変わったと思います。スコットランドはとてもオープンで先進的な考え方をする土地になりました。私たちはよその人を歓迎しますし、それに考えてみたら私たちは誰もが「ササナック」ではないでしょうか?スコットランド生まれでない人もここでは歓迎されていると感じるべきです。
そして、そう、私は自分で所有したかったんです。スコットランドらしい何かを作りたい気持ちもありました。アジアにはアジアらしい素晴らしいブレンドウイスキーがありますが、私たちにはまだないと思ったのです。他にも素晴らしいスコッチウイスキーはありますが、これは主にモルトウイスキーで、いかにもスコットランドらしい特徴を備えています。というわけで、それが始まりでした。スコットランドに戻ってからの仕事ですが、さまざまなブランドから一緒に働きたいという申し出をたくさんいただきました。でも私は自分自身で何かを作りたいという気持ちが強かったので、自分で資金を調達し、自分でデザインしました。
VG: 素敵なボトルですね!
SH: ボトルからデザインから中味の酒まで、すべて私です、本当なんです、それでそのことを誇りに思っています。
VG: 好みの味に行きつくまでテイスティングもされたとか?
SH: 最初、私たちはドライブの旅に出ました。私自身とビジネスパートナーとで、スコットランド中を回って、数多くのマスターディスティラーに会い、さまざまな生産者に会いました。ローランドからアバディーン、そしてハイランドも訪れ、最終的に私たちのマスターディスティラーになってもらうと決めた1人に出会ったのです。彼は深く理解していたし、判断も確かで、私たちは同意できる点がたくさんありました。その後、私は彼を何か月も苦しめることになりました。そうです、彼は私にサンプルを送り続け、私たちは味を決める試行錯誤を続けて、最終的にこのブレンドにたどりついたのです。 この大部分はシングルモルトウイスキーです。12年物と9年物のモルトウイスキー、それから19年物のオーガニック・グレーンウイスキーがブレンドされています。私はグレーンウイスキーの大ファンなんです。 この驚くべき、熟成年数の長いボトルがシングルモルトの半額で手に入ります。
VG: ウイスキーに関しては気取り屋ではないようにお見受けします。 良いブレンドであれば、ためらわずに飲み、グレーンウイスキーであれば、ためらわずに飲むんですね。ライウイスキーやその他の素材のさまざまなウイスキーを好むのも当然ですね。
SH: 実際、ライウイスキーの大ファンですよ。本当に大好きです。最近アメリカにいて、数多くの販売業者の方たちとニューヨーク周辺のトレッキングに出かけ、彼らの選んだライ麦の品種を見てきました。向こうでは手に入るけれど、こちらでは入手できないものもありました。
VG: それとササナック・ウイスキーと同じようにテキーラも手掛けているそうですね。
SH: テキーラのブランドとコラボしました。おかしなことに、それは米国でササナックを公式に発売した日でした。私たちは友人たちとメキシコのハリスコにいて、いろいろな種類のテキーラを試飲したんです。そこにいた友人の1人がトニー・サレスで、マスターディスティラーの3代目でした。彼は私たちのウイスキーを飲み、私たちは彼のテキーラを飲み、こんなふうになったんです。「何か一緒にやったらどうだろう、1回限りのボトリングはどうだ?」ってね。そしてそれは極上のテキーラでした、本当に素晴らしかった。
英国では米国ほど良質のテキーラを高く評価していないと思います。 私たちは皆、「テキーラをワンショットやろう」という思い出があります。飲むときには顔をしかめて、飲んだらライムをひと切れ掴んでしゃぶるんです。あまりにも酷い味だから。でもテキーラには素晴らしいシングルモルトウイスキーのようなものもあれば、ササナックのようなものもあるんです。熟成年数を重ねたテキーラ、レポサド(オーク樽で1年未満の熟成を経たもの)、アネホ(1年以上熟成したもの)には、さまざまなフレーバープロファイルがあります。私たちのテキーラは、ササナック・セレクト・エル・テキレーニョといい、ダブルウッド・レポサドで、実際はアネホなんですが、熟成したバレルのせいで、違う分類になっています。最初はバーボン樽で、その後にフレンチオークで熟成させているので、シャンパンクラスの品質に仕上がっています。
現在はジンにも取り組んでいるところです。私はスコットランドが大好きで、スコットランドの文化や伝統を大切にしたいと考えています。私たちには提供できるものがたくさんあります。 ジン市場は現在はかなり飽和状態のようですが、私たちは独自のジン、ワイルド・スコティッシュ・ジンを作っています。すべての植物はスコットランド産で、峡谷やハイランドから入手しているんです。本当に楽しいプロセスです。
VG: どのような植物素材を投入するつもりですか。 ヒースを少しとか?
SH: まあ、そんな想像もできますよね、ヒースは確かにありますから。でも野生のリンゴもありますよ。もちろん柑橘類を英国で見つけるのは非常に難しいですが、子供の頃に野生のリンゴを摘んだとても良い思い出があります。あのリンゴはとても酸っぱかった。実はコケモモ、ブラックベリー、トーストしたオーツ麦を使っています。おかげでとても面白い口当たりになりました。まるで濃いキャラメル味のようです。
VG: それから「メン・イン・キルツ」の経験と、あなたとグレアム・マクタビッシュが作った本『Clanlands(クランランズ)』について教えていただけますか。これまでにない経験だったことでしょうね。
SH: 私は番組の製作とプロデュースを担当しました。 ただスコットランドの旅に出て、自分が楽しめることをしたかっただけなんです。ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティからリチャードを迎えて、一緒にささやかなテイスティングをしました。実は午前9時にウイスキーのテイスティングをするというのが最初にやったことだと思います。たぶん旅を始めるのにぴったりの方法でした! 私たちはスコットランド中を巡り、いくつものアクティビティをこなし、今はニュージーランドを舞台にしたセカンドシーズンを終えたところです。そこでも素晴らしい1杯に何度か出会いました。ニュージーランドからは本当に面白いウイスキーが産出されていて、もちろん、あちらに移り住んだ多くのスコットランド人が技術を持ちこんだので、本当に驚くほどのことではないんですが。
VG: サム・ヒューアンの次の計画は何ですか?
SH: 私はとても幸運だと感じています…「アウトランダー」は、私にチャンスを与え、いくつもの扉を開いてくれました。ビジネスの側面でもそうですが、私が本当に熱心なのはウイスキーとジン、それから他にもいくつもあります。 そして実はスコットランドにとって実に重要なあることを準備しています。
VG: ここだけの話として少し教えてもらうことはできますか。
SH: とても大掛かりで、私が長年取り組んできたことで、とてもワクワクしています。それから願わくば、キャリアの面と演技についても、まあ、何が起こるかは分かりません。でももっといろんなことをしたいし、もっとウイスキーを飲みたいですよ!