バーボンを語る
フォアローゼズのブレント・エリオットと共にバーボンを語る
米国のクラフトブームの勢いを受け、大西洋を越えた英国にはバーボンのブランドが戸惑うほど流入した。 ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティのブランドアンバサダー、リー・「コンナス」・コナーは 、このほどフォアローゼズのマスターディスティラーであるブレント・エリオットと、伝統的なウイスキー愛好家が、ウイスキーとは違うバーボンの特徴をどのように理解しているかを語り合った。
ブレント・エリオットは生粋のケンタッキー人だ。 州の西で生まれ、東で教育を受けたブレントは、ケンタッキーの最も有名な輸出品を常に強く意識していた。
ただ興味深いことに、彼がバーボンウイスキー作りへの愛に気づいたのは、化学の学位を得て卒業し、ナッシュビルに引越したときだった。家族に会うため故郷に帰省したブレントは、彼の蒸留酒への情熱に火をつけたウッドフォード蒸留所に飛び込むことを決めた。
2005年、ブレントは首尾よくフォアローゼズ蒸留所のアナリストの職を得た。この時点で400万リットルの生産能力を持つ蒸留所は、年間3か月程度しか稼働していなかった。入社以降、彼はマッシュビルからラベリングまで、ウイスキー製造のあらゆる分野に精通するに至った。 そして今や、師であるジム・ラトリッジからマスターディスティラーの職を引継ぎ、生産量を倍増させた蒸留所を監督している。 というわけで、バーボンの世界を教えてもらうのに彼ほどの適材がいるだろうか?
ブラントは語る。「私はバーボンが大好きですが、スコッチも心から楽しみます。私にとっては穀物の使用法の違いに過ぎません。また私たちは新しいオーク樽を使い、ここケンタッキーは温度が高いので熟成が促進されるという事実があるだけです。 バーボンのほうが甘さがあって、一般的にウイスキーのほうがボディが重めというのは確かです。
私がスコッチに惹かれる大きな理由の1つは多様性にあるといつも力説してきました。 スコッチは地域も違えば、スタイルも違うなど、違いがいろいろあります。
“フレーバーの分布も実に幅広いではないですか! バーボンにあまり馴染みがない人たちは、バーボンのことをフレーバーの範囲がとても狭いと考えているのではないかと思いますが、必ずしもそれは当てはまりません。”
「ここに長くいればいるほど、科学はバックミラーの中にいるように感じます。 日々の活動の中では、科学よりも芸術のように感じられるのです。そして私はその両面をとても気に入っています」
ブレント・エリオット
「いろいろなバーボンの違いをお見せできるのは素晴らしいことだと考えています。異なるブランドを試すときはもちろんですが、うちの製造ラインでも違いが分かりますし、この違いがどうやって生まれたのかも説明できます。マッシュビルです。原料の穀物中にトウモロコシを51%以上含むのは必須ですが、マッシュの中にライ麦や小麦をどの程度使うかがウイスキーの最終的なフレーバーに影響を与えます」
ブレントはさらにこう話す。「さらに掘り下げると、蒸溜担当者は、望んだ結果を得るために、プロセスの中で、倉庫のコンディションや場所、特定のバッチ、樽の選択、ブレンディングにも気を配っています。これらはいずれも、ここケンタッキーで私たちが気を遣う微妙な違いで、スコッチの製造において着目されている差別化のポイントとは違うかもしれません」
ブレントはバーボンに対する情熱と、業界の理解度がぴたりと一致している人物だった。 さらに言えば、彼はすべてのウイスキーの種類に共通して言えそうな点を言葉にして残してくれた。「私は科学者で、あらゆる分析がウイスキーの製造プロセスにどのように役立つかを深く考えています。でもそれでは、ある程度のところまでしか行けません。分析は安定した結果を得るためやプロセスのモニターに使います。自然を相手にする製品、そして変数の大きな製品に取り組む際には役に立ちます。
ただ、ガスクロマトグラフィー装置やそういったものに頼っていては、ウイスキーがどれだけ素晴らしいかは絶対に分かりません。なぜかそういうふうにはできていないのです。 ここに長くいればいるほど、科学はバックミラーの中にいるように感じます。日々の活動の中では、科学よりも芸術のように感じられるのです。そして私はその両面をとても気に入っています」
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