ウイスキー・ビール

完璧なペアを

作り上げる

SMWSはブレア・アソールにあるウエスティッド・ディグリーズ醸造所の裏にある同類の蒸溜酒と協力し、私たちのカスクを4つ使用して、ウイスキーの影響を受けたユニークなビールを製造することにした。これはのちに私たちの倉庫に戻り熟成したソサエティのウイスキーとなる予定だ。

リチャード・ゴスランがこの素晴らしいハーフ・アンド・ハーフのコラボについて詳しくご紹介する。

メインフォト: ピーター・サンドグラウンド

ウイスキーとビール。 完璧なコンビだ。喉の渇きを癒すビールを一口飲みつつ、ウイスキーの強く打つフレーバーを味わう満足感といったら。
目の前の2つの飲み物の間に完全なシナジー効果があったら、満足感は更に増すだろう。

ソサエティとウエスティッド・ディグリーズ醸造所チームの最新のコラボにはそれが当てはまる。 会員諸兄は2021年10月に私たちがブレア・アソールの醸造所を訪問したことを覚えているかもしれない。 この訪問はビールとウイスキーの「ハーフ・アンド・ハーフ」訪問の一環で、近くのピトロッホリーにあるブレア・アソール蒸溜所のツアーと一緒に実施された。 今回、ソサエティは私たちのカスクを4つ、ウエスティッド・ディグリーズに提供し、こちらに返却して再びウイスキーで満たすのに先立って、ビールを熟成してもらうことにした。

ソサエティのスピリッツマネージャー、ユアン・キャンベルは、地元で調達できるトウヒの新芽を使ってユニークなビールを作るというウエスティッド・ディグリーズのアイデアをもとに、同社の共同所有者およびジャック・ロウ、コナール・ロウの兄弟と相談してカスクを選んだ。

「ジャックとコナールとは、様々な調達の選択肢や、異なるビール・スタイルにどんなフレーバーがつけ加わるかについて話し合いました」とユアンは言う。 「そして1度使われたバーボン樽に決めました。その樽からはアンピーテッドのローランドとスペイサイドのモルトウイスキーをボトリングしたばかりでした。 カスクはビールを思い通りに作れるように選びたかったので、あまり影響が大きいものは使いたくなかったし、補完的なフレーバーを加えられるカスクを探していました」

選ばれたカスクはいずれもファーストフィルのバーボン樽で、熟成に使用したのはカスク番号108.59: 春の最初の息吹、カスク番号9.252:果樹園の朝食、 カスク番号5.105:リスの食糧庫、そしてカスク番号5.106: あふれるトロピカルフルーツだ。 ビールに関しては、ソサエティの冒険精神に合致して、ジャックとコナールは、今までとはまったく違う何かをやりたがった。

「フレーバーの創造を追求するアプローチはSMWSの方法とよく似ています」とジャックは言う。 「ビールを1回醸造して、それが終わったら永遠に終わりという傾向があるのです。 このアプローチは創造とフレーバーの問題であると同時に選択と関心の問題です。それは消費者にとっても醸造所チームにとっても同じなのです」

ビールに関して、ジャックとコナールはインスピレーションを得るためにアソール・エステートの記録保管所で資料を漁り、ブレア城所有の醸造所で過ぎ去った昔に何が作られていたのか突き止めようとした。

「アソール・エステートの記録保存専門家であるケレン・ガスリーが、ブレア城の保存記録を調べる時間を使えるように取り計らってくれました。 歴史をずっと遡った時代に城には独自の醸造所があったことが分かり、レシピを見つけることはできなかったのですが、ケレンが感動的かつ興味をそそられる古い台帳と、城での飲み物の歴史の詳細が記された手書きのメモを引っ張り出してくれました。 一番古い書類は1139年のものでした。仕事をしていて実に興味深い1日でした!」

一番古い書類は1139年のものでした。仕事をしていて実に興味深い1日でした!」 アソール・エステートの記録保管所で書類に没頭したおかげで、ジャックとコナールに自分たちのビールのフレーバーには地元で調達できるトウヒの新芽を使うというアイデアが生まれた。

「そもそもスコットランドのビールは過去にいろいろな素材を使って醸造されたということは知っていました。特にホップが導入される前はね」とコナールは言う。 「そうした素材の1つがトウヒの新芽で、トウヒの木が春に成長する際の若々しい芽のことです。 北米の醸造では今でも一般的な素材です―単純に言って向こうはこちらより森が多いですから―そして新芽は使う量によって異なるフレーバーが加わることで知られています。

上: ジャック・ロウ、ザ・ヴォルツにて

どんな組み合わせの実験的レシピでも、つまらない味になったりやりすぎの味になったりする危険を回避し感銘を受けるバランスがあります。新芽が不足するとビールにぼんやりした柑橘系の香りが出るし、多すぎるとコーラのフレーバーが生まれるんです。 その中間のどこかに最高の結果が出る領域があって、焼いたマシュマロの香りをもたらします。 でも醸造するには約5キロの新芽が必要でした。簡単な仕事ではありません。新芽1つではうちの測定器の目盛は全然動かないんですから!」

兄弟はアソール・エステートの森林管理や森林保護のチームと協力して、エステートの木から手摘みでトウヒの新芽を収穫した。その際に木が健やかに育って良好な状態を保ち、将来的にレシピを再現できるように注意が払われた。

「未成木からは収穫しないというのが一番大切です。未成木から新芽を摘むと成長を阻害し、将来の樹木や新芽の収穫の機会が限定されてしまうのです」とジャックは言う。 「同様に成木1本につき、ついている新芽の20%以上は摘まないことにしていました」

その結果生まれたビールはコクがあるチョコレートの香りがする濃い色のスタウトで、約1200リットルが醸造された。 その3分の1はビールの発酵を終え、タンクの中で調整したあとすぐにパッケージ化された。一方、残りの800リットルは今、ブレア・アソールにあるソサエティのカスクの中で熟成されている。だが熟成の正確な期間はまだ決まっておらず、チームがビールの準備ができたと考えるのを待っている。

「ビールの『ビフォー』と『アフター』のバージョンを作ることにワクワクしました。美味しさの比較ができるだけでなく、醸造所とSMWSにとってはフレーバーの創造を学ぶ機会でもあるのです」とジャックは言う。 「醸造プロセスには科学がありますし、樽の熟成はどう考えても芸術です。私たちは定期的にビールをサンプリングしていて、ウイスキーと同じように準備ができたと思ったら、注がれ、新鮮で口当たりのよい弱炭酸を感じたら缶に詰められるのです」 ブレア・アソールでのワーキングホリデーの後、カスクはSMWSに戻され、そこでユアンとスピリッツチームが追加熟成期間を設ける。

「私がビールのカスクに入れようと選んだウイスキーは、その前にカスクに入っていたものに似ています。そうやって輪がきちんと完結するのです」とユアンは言う。 「甘くてよく熟成されていますが、ビールのフレーバーやアロマがはっきり現れるのがわかる程度の軽さがあります」 ウエスティッド・ディグリーズの樽に入っているウイスキーを会員が試飲するのはいつになるだろうか? ウイスキーの世界の何につけても同じように、それにはいくらかの忍耐が必要なようだ。

「2019年に私たちがテンペスト・ブリュワリーと協力してオールドファッションド というブレンデッドモルトを作ったときは、ビールのカスクで約15か月熟成させたので、まだ相当な先かと思います」とユアンは言う。 「安心してください。完成した暁には、世界中にいる会員の皆さんのため、できるだけ広範囲でシェアしたいと考えています」

きっと待つ価値のある「ハーフ・アンド・ハーフ」となるだろう…