ソサエティのリカスク
ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティの設立以来の年数とほぼ同じ長さの期間、私たちはシングルカスクからウイスキーのボトリングをしてきただけではない―ウイスキーの熟成管理にも積極的に携わってきた。
WORDS: RICHARD GOSLAN
ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティは、40年前に、既に熟成されたウイスキーをカスクから直にボトリングする形で設立されたというのは正しいかもしれない。しかしソサエティの初代マネージングディレクター、アン・ダナーは、この貴重な熟成を終えた製品の需要が供給を上回ることに、すぐに気づいた。アンは、ソサエティに自分たちのバレルの購入を開始するべきだ、特にニューメイクの蒸溜酒を熟成させるバレルが必要だと提案した。
「私は『いい?私たちはウイスキーの貯蔵を始めなければ』と言ったんです」とアンは語る。「これまでの(熟成ウイスキーの)バッチが売り切れたので、自分たちのウイスキーの貯蔵を開始する必要があると気づきました。それからウイスキーを入れるバレルの選択も必要でした」
上記:アン・ダナが選りすぐりのソサエティのドラムを嗅ぐ
上記:元SMWS専務取締役リチャード・ゴードン
上記:故ジム・スワン博士
1980年代に早くも木材の質に着目したが、それは次の10年も続いた。それに伴ない、ソサエティは初めて追熟の世界に進出した。一番早いもので1991年のボトリングリストには「実験」という表現で、カスク番号39.7がセカンドフィルのフィノカスクに注がれ12年が経過した後に、「非常に上質のオロロソカスクで2年間寝かせた」という記述がある。その結果は「実に良いウイスキーとなった」と記載されている。
追熟への移行は、1995年にさらなる勢いを得た。その年、当時のマネージングディレクターのリチャード・ゴードンが、ジム・スワン博士に木材購入と木材管理における専門知識のアドバイザーとして協力を取り付けたのだ。
「グレンモーレンジに対するジムの仕事は当時、画期的でした」とリチャードは語る。「その後、私たちの主な関心が熟成開始のための最高級木材になったので、ジムはソサエティにとって素晴らしい援護になりました。一方、私たちはカスクを購入する機会を活用して、さまざまな熟成年数のウイスキーや熟成途中のウイスキーの仕上げを、主にシェリーやポートで行うことも始めました。
当時の私の目標は、単にボトリングのための熟成ウイスキーの購入に依存するのではなく、ソサエティが熟成開始から完全熟成までの貯蔵リストを構築することでした。木材はフレーバーに寄与する主な要因なので、質の良いカスクに重点を置いて投資するのはもっともなことです。
ほとんどのカスクは熟成開始用でしたが、『追熟用』のカスクも大量に購入しました。熟成年数3年から5年の若いウイスキーには、シェリーカスクとポートカスクを利用することで、続く数年をかけてフレーバーを強化できるようになりました。また、さまざまなポートカスクやシェリーカスクを使って、もっと熟成したウイスキーに1年か2年の熟成を追加することもあります。
「こうしたことすべてがメンバーの関心をさらに高めることになり、傑出したウイスキーという結果にもなっています」
上記:SMWSスピリッツディレクターのカイ・イヴァロ
上記:レイチェル・バリー博士
2004年にソサエティがグレンモーレンジに買収されたおかげで、マスターブレンダーのレイチェル・バリー博士や最高蒸溜・製造責任者のビル・ラムズデン博士から、木材管理と追熟に関する専門知識の助言が受けられるようになった。
「レイチェルは目的に応じたカスクを確定してから、グレンモーレンジが自身の『エクストラマチュア商品』のために購入した最高品質の木材の中から選んでくれました」SMWSのスピリッツ・ディレクターであるカイ・イヴァロはそう語る。
「特に、2011年、グレンモーレンジが新しい目的で建設したボトリング工場に移転したときに、レイチェルが約100樽のカスクを再び棚に並べるように手配してくれたのです。
ソサエティはまた、どのカスクが追熟に向いているかを選択し、詰め替えるのにふさわしい木材の提案をしてくれたビルの参加の恩恵も受けました。ビルは基本的に私たちに教育を施し、それからこれらのカスクの進捗状況をチェックしてくれました」
上記:もう1つのソサエティの樽が安全に倉庫にしまわれています。
今年は、アッディーンストンのマスタートン・ボンドに作られた私たちのカスク貯蔵庫の正式オープンの年だ。おかげでSMWSのウイスキー製造責任者であるユアン・キャンベルには在庫管理の権限がさらに与えられた。
貯蔵庫に配達された蒸留酒を受け取ると同時に、空のカスクの定期的な輸送もある。ソサエティは今やスコットランド、米国、ポルトガル、スペイン、フランスなど、オークバレルの主な調達先であるすべての樽製造業者との関係を確立していて、人に会い、製造品の品質と種類を直に体験するために現地に飛んでいる。
ユアンは追熟期間を、ソサエティのボトルからメンバーがもっと多様で複雑な体験ができるようになる時間と考えている。
「多様性は私たちが常に求めていることで、追熟は私たちが追加できる複雑性の層だと考えています」と彼は言う。「カスクが100樽あり、すべてがファーストフィルのバーボンカスクなら、私たちはその一部をスパニッシュオークのペドロヒメネス・ホッグスヘッドに、別の一部をオロロソカスクに、また別の一部をマデイラカスクに移し替えると決めるかもしれません。もちろんすべてを異なるカスクで熟成させるつもりはありませんが、私たちには少し違う何かをする機会があり、最終的にはそれがメンバーの選択肢を増やすことになります。
うまくいくという感覚はすぐに得られます。ほとんどのウイスキー愛好家は直感的にうまくまとまる性質を選べるのではないかと思っています。コツは木材管理を通じてこうした性質を達成する方法を知ることです。しかし何がうまくいくか知ると同時に、上質の蒸溜酒と上質の木材があるのなら、予想もしていなかった何かを生み出す実験をするのにも夢中になってしまうものなのです」
上記:SMWSウイスキー創造部門のユアン・キャンベルがヘレスで樽を調達中