設立40年 究極のメンバー体験
サマンサ・ロスバートは、今年2月にザ・ヴォルツを訪問してアニュアルギャザリングのイベントのためにカスクを選ぶプロセスに参加した16人のメンバーの1人だ。本稿では、彼女がその時の体験とソサエティのメンバーであることの意味を教えてくれる。
PHOTOS: MIKE WILKINSON
写真: The Vaultsで仲間のメンバーと一緒にいるサマンサ・ロスバート
メンバー集まれ GATHERING TOGETHER
エディンバラのジョージ・ホテルの前に集まった一団は、タクシーを待っているという事実以外には、ほとんど無関係に見えた。しかし一見雑多なこの一団は、世界13か国を代表していて、非常に重要な共通点があった。私たちは全員ウイスキーの熱狂的愛好者なのだ。ただ一杯を愛するという以上に、私たちは格別に素晴らしい一杯を特別に愛している―それがザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティの心の故郷であるザ・ヴォルツに私たちが向かっている理由だった。
私たちは9月に開催されるSMWSのギャザリングのためのカスクを選ぶイベントに参加する機会を与えられたのだ。この世界規模のイベントは、対面式とオンラインの両方で開催される一連のパーティとイベントを通じて、会員同士をつなげて祝うというものだ。
私たちはソサエティの40周年を祝う一環として、私たちの国それぞれのギャザリング限定ボトルを選び、テイスティングノートを書くことになっていた。それを仕事と呼ぶ人もいるかもしれないが、私なら人生のために喜んでするだろう。
上記:未来のテイスティングノートの起源
写真:メンバーが瞬間を捉える
官能ワークショップ
翌日とその次の半日は、官能ワークショップに完全に没頭することになっていた。ベテランのパネリストであるジュリアン・ウィレムズとオラフ・マイヤーが私たちの案内人だ。お望みなら、私たちは臨時のゲスト・テイスティングパネルと言ってもいいだろう。全員が良質のウイスキーにどっぷりハマる準備万端と思っていたが、まずは鼻と口を敏感にしなければならなかった。
ジュリアンは一連のノージング用作業台を準備していた。私たちはウイスキーのにおいを嗅ぐブラインドテストを行い、各チームで意見を一致させて、それぞれのウイスキーについて3つの主要な特徴を挙げることになった(そして、グラスの中の液体が12のフレーバープロファイルのどれに該当するか当てたらボーナスポイントをもらえることになっていた)。各作業台に割り当てられた3分間はあまりにも早く過ぎ去った。舌先に感じるアロマに形を与える努力の中で、さまざまなスパイス、菓子、フルーツの名前が飛び交ったからだ。ノージングの後は、大いに楽しみにしていたテイスティングが続いた。興味深いことに各国のテーブルには、ただ「サンプル番号X」と書かれた何本かのボトルが並んでいた―これから、このブラインドテストをするということだ。
オラフは私たちにこれから待ち受ける練習の準備をさせ、頭と口を客観的に保つのに役立つスピトゥーンを楽し気に指差した。彼は本物の言葉の達人で、ソサエティのウイスキーに独特のフレーバーを与える多くの風変わりなテイスティングノートの裏にいる人物だ。「時にはチームの仲間にやりすぎだと言われることもあります」彼はニヤリと笑う。私たち自身のライティング・セッションが終わる時までに、全員が自分の記述はやりすぎたと感じた瞬間があっただろうと思う。
写真:ジュリアンがテイスティングの展開を進行ています
本題に入る
そしてそう、ボトルの選択という厳しいプロセスの時間だ。私たちは飲んではいない(まあ、全員とは言えないかも―あなたのことよ、フランス!)。私たちは評価して、深く考えて、そして完璧な形容を取り出すために記憶の奥まった場所を活用している。これは品質管理の問題だ。
以前、バーのスタッフと話していて、ウイスキーを飲み続けるなんて、なんとたいへんな仕事をしているのかとよく冗談を言っていた。でもその通りだ。背景もわからず、色のグラデーションだけで判断するのは、パズルと同じだ。しかし全員にとってこれまでになく解くのが楽しいパズルだった。私たちそれぞれが選択を終え、昼食の短い休憩を挟んだ後に戻ってきた会場の光景は注目するべきものだった。
写真: オラフは自分の経験を語りました。
私たちが「却下」したボトルすべてが、バーの上にきちんと、思わせぶりに並んでいる。美味しくて気の利いた仕掛けの中で、私たちは他の国々が却下したものを味わい、自分の国のために別なウイスキーを選びたいか判断する機会を与えられた。雰囲気が微妙に変化し、誰もがとても「真剣な仕事」に向かう準備ができているのがわかった。ボトルの栓の開く音、部屋を回る人々の絶え間ない動き、目まぐるしい速さで消えてはまた現れるボトルという琥珀の渦に囲まれる。だが何とかして私たちは決断に至った。自分の信念を守り、最初のボトルから変えなかった人もいた。もっと魅惑的な申し出を受けて、心変わりをした人もいた。そして決断に至るプロセスにスピトゥーンの助けを借りた人までいた。
写真:決断、決断...
語り手たちのソサエティ
朝が来ると、ノートを書くためのセッションがあり、自分の選んだウイスキーを再び味わう機会が与えられた。ただ今度は、自分のウイスキーがどこの蒸溜所のもので、どうやって熟成され、どんな風にフィニッシュしたかの情報も知らされる。私は少し心配していた―前日のノートを見て自分は一体何を飲んでいたのかと訝しく思う可能性が充分にあったからだ。だがそれこそが、ウイスキーをとても面白くしているのではないだろうか。ウイスキーは停滞することなく、常に進化している。ボトルの中で。グラスの中で。口の中で。変化して当然だ。そして私たちは飲むたびに何か新しいこと、予期していなかったことを見つけるのだ。
最終段階に入る直前、私たちは他ならぬソサエティの創設者、ピップ・ヒルズから最初のテイスティングパネルの歴史について教えていただいた。旅の締めくくりにふさわしい方法だと感じられた。結局のところ、ここは語り手たちのソサエティで、友情と連帯と良いウイスキーの楽しい歴史は、現在のソサエティの姿を形成するのに不可欠なのだ。
今回の体験は緊張もしたが非常にやりがいのあるものだった。選択のプロセスに参加したことで、これまでになく、ソサエティという結びつきの強い団体の一部になった感じがした。カーテンの奥をのぞくユニークな機会を与えられ、SMWSはその質ともてなしにおいて高評価を築いた洗練された運営をしているという私の第一印象を再確認できた。ソサエティはあらゆる種類のウイスキー愛好家のための故郷となっている。
友人たちや同じ心を持つ愛好家が集う、居心地の良い拠点だ。思いに耽る一杯と共にくつろぎたい、孤独を求める人たちの場所でもある。新しいフレーバーを発見したい恐れを知らぬ冒険者たちの目的地でもある。
私たちは皆、多くのことを学び、素敵なウイスキーを飲み交わした素敵な人々とつながって、ずっと豊かになった気持ちを抱えて旅を終えた。もちろんこれがソサエティの最後の訪問とはならないだろう(そして互いに会う最後にもならないことを願っている)。私たちはウイスキーを求めてザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティに来るが、仲間のために滞在するのだ。
サマンサと他の参加者が選んだカスクは、9月に開催される世界中の40周年記念ギャザリングでお披露目される予定だ。