フレーバーが息づくところ

ライトピート

9月になった。夏の暑さは過ぎ去ったので、海辺のキャンプファイアに集まろう。 気持ちよく座れただろうか。 ジュリアン・ウィレムズがソサエティのピートフレーバーのプロファイルを持つウイスキートリオを紹介する。短い秋から夜の長いスコットランドの冬の入口まで、私たちを忙しくさせる話題だ マシュマロを串に刺し、火にかざして焦がそう。串刺しのサーモンを炎で焼いて楽しみ、極上生ハムのパタネグラをひと切れふた切れ味わおう。 すべてを1杯のラプサンスーチョンで洗い流し、終わりなき新鮮で風味豊かな冒険に誘ってくれる炎を褒めたたえるとしよう。

MAIN PHOTOS: PETER SANDGROUND

すべてはこの言い回しから始まる。どんな形にせよ人類と同じくらい古いと思われる言い回しだ:煙あるところ火が存在する。 そして火はウイスキーの名もなき英雄の1人だ。 火はウイスキーの製造過程全体とウイスキーの歴史を結びつける要素だ。 大麦を大麦麦芽に変える熱を供給するところから、常に喉の乾いたスチルを熱し(とにかく元々は)、カスクを焦がしてチャーリングするところまで、火の重要性は言いすぎることがない。 1口飲むたびに、火はスコッチウイスキーの最も象徴的で人気のあるアロマを作り出す一助となっている。

今日は、ソサエティのライトピートのフレーバー・プロファイルに分類されるまでをじっくり考えてみたい。 焦がしたマシュマロやバーベキューで焼いたフルーツの絶妙なアシストのようなフレーバーに関する形容詞の場合、エステルの炎がまだ燃え盛っている。

このウォッシュ(もろみ)の発酵過程で作られるフルーティなフレーバーの化合物についての説明はもう要らないだろう(この話題についての詳細はスイート、フルーティ&メロウの記事をお読みいただきたい)。 ここではスモーキーなピートの香りが、ウイスキーに少しばかり強めの蒸気と後味の長さを加えている。 燃えた小枝、木灰、スモークサーモンは飲み物としては意見の分かれるフレーバーかもしれないが、すべてが深みのある甘いラベンダーとヘザーハニーのフレーバーでコーティングされているとしたら、皆の関心を刺激するのではないだろうか。 これらのフレーバーは、いずれも普通はフェノール化合物と関連していて、ピートの燃焼と密接につながっている。 だが最終的にウイスキーの中にどう落ち着くのだろうか。

「炉にピートを使用した場合、その濃厚で芳しい煙は、大麦に土や煤、焦げ、時には薬や暗い花のような紛れもない香りを与えます」。

熱を感じて

麦芽になる前、大麦は水に浸して発芽させる。 植物は成長の際に物質(酵素)を分泌し、それが穀物の中の澱粉を単糖に分解する一助となり(大麦糖を考えると分かりやすい)、単糖はエネルギー源として使われる。 植物が成長するにつれ、粒に残る糖は少なくなるので、芽を摘み取ることが重要だ。 そしてそう、次に来るのは、もうお分かりだろうが火である。 より具体的には、(伝統的には)キルン(乾燥棟)内で熱風を使い、まだ湿っている穀粒を乾燥させて発芽を止める。 ピートが炉で使われれば、その濃く香り高い煙が大麦に、土っぽさ、煤の匂い、焦げた感じ、時には薬品臭や、豊かなフローラルのアロマといった間違えようのない烙印を押す。 このフェノール化合物はウォッシュ(その後蒸溜されて蒸留酒となる麦芽ビール)にアロマの特徴を与え、蒸溜によりさらに濃縮されて蒸留酒に含まれる。 ライトピートの麦芽の場合は、その名が示唆するように麦芽につくピートの香り(時々聞くものの必ずしも大きく関連性があるとは限らない『ppm』(100万分の〈フェノール成分〉の割合)の単位で議論される)のレベルが通常低めだ。

しかし同じくらい重要なのが麦芽を蒸溜する方法である。 普通は平均的なアンピ―テッドのグラスと比べると、トップに来るのはスモーキーで、時として薬品臭もあるが、オイリーでミーティな香りもする。 これは5月に掲載したオイリー&コースタルの記事に書いた考えとも密接につながっていると言えそうだ。オイリーなフェノール化合物はエステル、エタノール、水よりも残りやすく揮発しにくい。 つまり、ウォッシュやローワインに含まれるフェノール系のアロマを活用するために蒸溜の際のカットのタイミングをできるだけ遅くする(「ローポイントにする」)という意味になる。 しかし蒸溜過程が長くなるにつれ、最初のナッツ、ミート、フィッシュのアロマに、望ましくないスイート、チーズの香りもスチルに入り込もうとする。

つまり、すべては蒸留酒をすっきりと保ちつつ、蒸溜担当者が望むスタイルに合わせて、どれだけのフェノール化合物を抽出してバランスを取る作業となる。 しかしライトピートのモルトウイスキーに関しては、すっきりとして抑制が効いているのがトレンドだ。 さらに言うと、フェノール化合物は1分間集中するだけで、ほとんどの人は知覚できる。私たちの嗅覚システムがこの化合物に非常に敏感なためで、少なくともその一部は進化的な理由だと考えられる(森の中に住んでいたら、火の匂いを嗅ぎあてることが、結局は非常に重要となるからだ)。

カスクのコンボ

だが話は蒸溜だけに留まらない。 以前の記事で述べたように、カスクも幅広いスモーキーなフレーバーに寄与している。グアヤコールのような化合物はピートのアロマに影響を与えるし、ウイスキーに直接そのアロマをもたらすことさえある。 ピーテッドウイスキーを熟成させたカスクが空になり、別な蒸留酒の熟成に再利用されると想像してほしい。

ソサエティの蒸溜酒チームは過去に―そして最近にも―このことを実験したことがある。以前にピートまたはヘビーピートのフレーバー・プロファイルに属するウイスキーが入っていたカスクでアンピーテッド・ウイスキーを熟成させたのだ。その結果は驚くほどの出来栄えでとても喜ばしいものとなった(数ある中でもカスク番号89.14:驚きのオムレツやカスク番号89.15:ピンボールの魔術師 、70.38: B+B=B² などを思い浮かべてほしい)。 だが蒸溜酒チームは特定のタイプのピートフレーバーでも遊んでみた。

例えば、カスク番号4.293:ズルいコンボでは、もともとシェリーの大樽(バット)に入っていたオークニーのピート風味の蒸溜液を、以前に長期熟成させたアイラウイスキー(カスク番号29.260:理屈抜きで基本的な経験)の入っていたオロロソシェリーの大樽の二次利用として移し替えた。 これは結果として素晴らしく豊かなシェリー風味に、はっきり分かるアイラとオークニーのピートの特徴が感じられる一杯となった。

全般的に見て、ウイスキーにピートのスモーキーなフレーバーを加える方法は多くあり、特にライトピートの一杯を考えるとそれが当てはまる。 ちょっとしたスモークとピートは情熱を輝かせるのに大きな役割を果たすことができる。 この文章を持ってこの物語の第1幕はおしまいだが、秋は兆しを見せたばかりなので、ピーテッドモルトやピートそのものについては、今後さらに考察を加えていくつもりだ。 それまでの間、ライトピートのウイスキーを開けて、この素晴らしく多様なプロファイルの微妙な複雑性を味わっておくのを忘れないでほしい。

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